鈴緒が取り外された気比神宮の拝殿。例年は正月に鈴緒を増やしているが、今回は設置しないという=福井県敦賀市曙町

 新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、福井県内の神社は初詣に向け、多くの人が触れる鈴緒やひしゃくの撤去、参拝者の距離の取り方といった感染防止対策の検討を進めている。神職は「例年と同じ方法では難しい。参拝者が安心して1年の平穏を願えるようにしたい」と口をそろえる。

 例年は三が日に計10万人以上が訪れる敦賀市の気比神宮。今年の春先に拝殿前にある二つの鈴緒を撤去し、例年正月に別に用意する五つの鈴緒も設置しない。桑原宏明宮司は「今回に限っては、感染リスクを考えれば設置は難しいのではないだろうか」と話す。

 参道に並ぶ参拝客同士の距離を保つよう呼び掛けるのぼりや、祈祷(きとう)を受ける人向けには瞬時に体温が分かるサーモグラフィーを新たに購入した。混雑が予想される祈祷の待合室は、近くにテントを設けて3密を避ける。例年200件を超える企業単位の参拝も、1社当たり極力10人までに絞ってもらう考え。「マスク着用や手指の消毒、混雑する時間帯を避けてもらうなど、参拝客の協力をいただきながら、できる限りの対策を取りたい」

 越前町の劔神社も鈴緒を撤去しており、正月も設置しない考えだ。手を清める手水舎はひしゃくに代えて流水式に変更。境内に常時放送を流し、マスク着用や大声を控える、周囲と距離を保つなどを呼び掛ける。

 年始には例年2千件の祈祷を受け付け、待合室の換気や消毒など気を張る場面は多い。お神酒の提供も中止する方針で、田中紘範権禰宜(ごんねぎ)は「今回は疫病が落ち着いてほしいと願う気持ちが強いと思う。対策を取り、願いをしっかりと受け止められる場でありたい」と語る。

 新型コロナ対策で、初詣や帰省による大幅な人出の増加を避けるため、政府は年末年始休暇を来年1月11日まで分散取得するよう経済界などに要請した。県も分散して取得するよう協力を呼び掛けている。「年が明け、まず神様にごあいさつして1年を始めるのは日本人の心」。県内のある神職はこう話し、休暇が分散しても参拝者は三が日に集中するとみている。

 仮に参拝者が分散した場合の懸念もある。県神社庁によると県内の神社は約1700社で、宮司が常駐する神社は約110社。40以上の神社を1人で担う宮司もいる。集落単位での祈祷が分散すれば、対応が難しくなるとの見方もあるようだ。

 県神社庁は11月27日、啓発看板や消毒液の設置、参拝客の動線整備、待合室の3密回避といった初詣向けの指針を示し、県内の全宮司に郵送した。金岡正和庁長は「初詣は年間の大イベント。各神社で対策をしっかり取り、安心してお参りしてもらえるように努めていく」と述べた。

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