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 久々のカロリーヌ・リンクである。日本では、ドイツ映画祭2009で上映された『冬の贈りもの』以来となる。彼女の作家性は、少女たちのみずみずしい肌触りを端正な画面の中に息づかせるところにあり、今回もそんなアンビバレントな魅力にあふれている。やはり少女の成長物語で、ユダヤ人でヒトラーに批判的な演劇評論家を父に持つ9歳のアンナが、家族でスイスへ亡命。さらに、生活の糧を得るためにフランス、イギリスへと渡っていく。

 原作は、世界的な絵本作家ジュディス・カーによる自伝的色彩の強い児童文学の古典。その意味では、ケストナーの映画化だった『点子ちゃんとアントン』を思い出させるが、ナチスによるユダヤ人迫害と異国での慣れない生活を扱っている点で、アカデミー外国語映画賞を受賞した『名もなきアフリカの地で』の姉妹編とも取れる。

 それにしても彼女は、子どもや動物を活用するのがうまい。あるいはハエも然りで、主演の少女が輝いて見えるのは、演技力以上に演出によるところが大きいのだ。彼女が描く少女たちが常に、感受性が豊かで繊細なのにたくましく思える秘密もそこにあるかもしれない。アンナがまさしくそうで、だからカロリーヌ・リンク度100%の作品と言いたくなる。今年はポーランドのアグニェシュカ・ホランドの新作『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』も傑作だったが、ヨーロッパを代表する女性監督たちの健在ぶりがうれしい。★★★★★(外山真也)

監督:カロリーヌ・リンク

出演:リーヴァ・クリマロフスキ、オリヴァー・マスッチ、カーラ・ジュリ

11月27日(金)から全国順次公開

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