新型コロナウイルス感染防止や重症化予防が期待される物質を発見し、会見する福井大学の研究チーム=11月17日、福井県福井市の同大文京キャンパス

 福井大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の研究チームは11月17日、新型コロナウイルス感染防止や重症化の予防が期待される物質として「プロピオン酸」と「プロピオン酸ナトリウム(Na)」を特定したと発表した。両化合物に、ウイルスと結合する人の細胞表面のタンパク質を減らす効果があることを突き止めた。今回は細胞レベルの検証結果であることから、研究チームは実用化に向けた協力企業を募っており「鼻への噴霧液やうがい薬などの開発につなげたい」としている。

 研究チームの藤枝重治教授と高林哲司講師が同日、福井市の文京キャンパスで会見を開き説明した。

 新型コロナウイルスは、口や鼻から入ったウイルスの外膜と人の細胞膜が融合することで感染する。ウイルスの表面には、突起状の「スパイクタンパク質」がある。人の細胞の“入り口”となるのが、細胞表面にあるタンパク質「ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)」。スパイクタンパク質がこれにぴったりと結合した後、細胞内に侵入し発症する。

 新型コロナウイルスの初期の炎症や増殖は鼻腔(びくう)や咽頭などで起こり、ACE2も特に鼻の粘膜の上皮細胞に多いという。ACE2は、量が多いほど感染率や重症度が高くなることに加えて、小児に比べて成人は多いことなどが分かっている。新型コロナウイルスのACE2への結合力はSARSウイルスの10~20倍強いとされ、結合力の強さが感染力の強さに関係しているという。

 研究チームはACE2に着目。「ACE2の量を減らせば、感染を予防できるかもしれない。感染した人に対しては重症化を抑えることができるのでは」(高林講師)と推定した。

 研究は6月ごろから開始。鼻粘膜と気管支の上皮細胞を試験管で培養し、100種類以上の物質を投与してACE2の増減を調べた。その結果、プロピオン酸とプロピオン酸Naを投与した場合、それぞれの濃度が濃くなるほどACE2の量が減っていくことが分かった。6時間ほどの持続効果があるという。

 高林講師は「本来は新型コロナウイルスを使った研究や動物実験が一番いいが、すごく時間がかかる。協力企業を募って時間を短縮して、実用化できるようにしたい」と話した。