動画サイトでテクニックがスゴいと話題のピアニストが、ボーカロイドを起用したオリジナル曲を発表した。ここ1〜2年、Official髭男dismなどピアノを駆使したバンドが人気だが、時代がまらしぃに追いついたようにも感じる。

 バンド形式による1曲目『十年越しのラストピース』は、長年の想いを伝えるようなポップなラブソングで、ドラマ性のある展開は彼の作詞家としての才能も感じさせる。

 また、3曲目『僕のために泣いてくれ』は、ジャジーなピアノ演奏と内省的な歌詞からか、意外にも宇多田ヒカルを想起した。かと思えば、6曲目『夢色七色』は、明るい演奏と、ツンデレ気味な歌詞のバランスが80年代のアニソン風にも聞こえる。随所に雨の景色を描きつつ、そこから“晴れ”や“夜明け”をイメージさせるのも上手いし、とにかく音楽ルーツが幅広くかつ深くて感心する。

 出色は9曲目のエールソング『青く駆けろ!』だろうか。序盤の優しいピアノが内省する現状と、徐々に激しくなるピアノが昂ぶる感情とそれぞれリンクし、「頑張れ頑張れ言わなくても 戦っている 君のことを 僕はこの歌で伝えよう」という終盤では、聴き手も一緒に応援したくなるほど乗せられている。これは、多くの夢を抱く人に歌ってほしい名曲だ。

 『シノノメ』の全曲をピアノだけで演奏したCDも同時発売。こちらは、ギタリストの押尾コータローさながら、ソロとは思えない多面性に舌を巻く。彼の作品を聴くと、以前に諦めていた何かを見直すキッカケが作れるはず。

(Subcul-rise Record 2273円+税)=臼井孝

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