廣部泉さんの「黄禍論 百年の系譜」(講談社)

 福井県福井市出身の歴史学者で明治大教授の廣部泉さんが「黄禍論 百年の系譜」(講談社)を刊行した。コロナ禍であえぐ米国であらわになった黄禍論について多角的視点で論じ、米中2カ国に挟まれた日本の針路を考える際は「黄禍論を切り離して考えることはできない」と説いている。

 黄禍論とは、19世紀半ばから20世紀前半にかけて欧米などの白人国家に現れた黄色人種脅威論。底流には白人の優越性と黄色人種の劣等性という考え方がある。

 日米関係の歴史を専門とする廣部さんは、本書で米国の現代社会に焦点を当てた。新型コロナウイルスによる肺炎を巡っては、アジア系の人たちに対する差別的な言動が広がった。黄禍論は過去のものでなく、形を変えながら脈々と現代まで続いていることを指摘する。

 戦後、経済発展を成し遂げた日本。廣部さんは「米国化が急激に進み、日本人の若者は、豊かな白人中産階級のような視線で世界を見てしまいがちだ」と分析。その一例として、「人種差別」とは言わず「黒人差別」と言う日本人学生を挙げる。

 人種差別的な言動をするトランプ大統領が誕生したことについて廣部さんは「アメリカ内に黄禍論的思考を持つ勢力は少数ではないことが分かる。黄禍論を理解し、アメリカと付き合っていくべきだ」としている。

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