本連載を担当させていただくようになり、欧米で多くリリースされている有名アーティストの音楽ドキュメンタリーが大好物になってしまった。この手の映像作品は、意外と本人は脇に置かれていることが多くて、周囲にいた人々の証言の積み重ねからアーティストの輪郭をじんわりとあぶりだしていく。ひょっとしてアーティスト本人にとっては「そんな話は嘘っぱちだ」なんて言いたくなるようなエピソードも含まれているかもしれないけれど、でもやっぱりみんな“偉大な隣人”との逸話は語らずにいられない。そこには人間の業さえ現れているようで興味深く、出会ったこともない人たちの思い出話の世界につい引き込まれてしまう。

 本作は言わずと知れた稀代のミュージシャン、エリック・クラプトンの1960年代の足跡を、歴代バンドメンバーや有識者の証言とともに代表曲を時系列に追いながら紹介した映像作品。時折ご本人の過去のインタビュー&ライブ映像も登場し、波乱万丈の一時代を振り返る。60年代の彼の演奏は、今のイメージよりもっととんがっていて、ロックで、当たり前だけれど若さにあふれている。唯一惜しむらくはそのライブ映像さえ、人々の証言と同じく細切れに切り刻まれてしまっているところかもしれないが、ふいに途切れる日本語字幕も含めて、なんだか忘れがたく印象に残る作品だった。

(ポニーキャニオン・3800円+税)=玉木美企子

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