子どもたちと歌う保育教諭。給与面などの待遇改善が求められている=福井県福井市

 保育士は子どもに人気の職業なのに、なぜ人材不足が続くの?―。福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)に、こんな疑問が寄せられた。福井県が保育人材センターを新設して1年が過ぎ、資格を持ちながら離職していた23人の再就職につなげた。ただ現場からは「求められる仕事の質に待遇が見合っていないのが現状」と不満の声が上がる。

 福井労働局によると、今年8月現在、保育士の有効求人倍率(臨時雇用を除く常用)は全体の1・35倍を上回る2・04倍。女の子が就きたい職業のランキングでは毎回上位に入っているが、実際は人手不足が続いている。人手が必要な0歳児や1歳児らの通園が増加傾向といい、県はこうした状況を受け昨年10月4日、県社協に委託して福井市に県保育人材センターを設置した。

 県子ども家庭課によると、保育士の有資格者は県内に約1万2千人。一方、保育所や認定こども園で実際に働いている人は約5千人にとどまる。同センターは、潜在保育士に就職してもらうことで人材の確保を図る狙いだ。

 今年9月末までに229人が人材バンクに登録し、うち222人が実際に求職活動。23人の就職が実現した。県は2024年度までの5年半で150人の就職を目指しており「認知度が低い最初の1年としては一定の成果」とする。

 県社協が課題に挙げるのは、園側がフルタイムの人材を求めるのに対し、求職者は平日のみや短時間など非常勤を望む人が多い点。ただ23人中19人はマッチングが難しい短時間などの就職で、県は「県内の保育所等待機児童は4月1日時点で3年ぶりにゼロ。センターの効果も表れた」と胸を張る。

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 「行政が決めた園は遠方のため通えない」「希望の時期に入園できない」―。ふくい特報班にはそんな声も寄せられている。県内の保育所や認定こども園の大半が加盟する県社協保育部会の澤田夏彦部会長(認定こども園竹里園長)は「保育士不足が希望通り入園できない事例につながっている側面は多分にある」と認める。背景として指摘するのは待遇の不十分さだ。

 県によると、県内保育士の平均年収は358万円。国は15年度以降、本格的に待遇改善の取り組みを進めており、県内でも14年比で3割増。ただ全国平均(364万円)にも届いておらず「保育の仕事は、けがをした場合なら医療の知識など、専門性も必要。最近は新型コロナ対応もある。勤務時間も長く、求められる仕事の質に待遇が見合っていない」と澤田部会長。

 なぜ需要が多いのに待遇が不十分なままなのか。澤田部会長は、自身が保育に携わった40年以上前を振り返り、当時の社会の認識を理由の一つに挙げる。「かつて保育は、『女性が子育てを経験する花嫁修業の延長』との認識があった。賃金が低いのはその名残の面がある」。福井市には園の新設計画もあり、保育士不足は今後も続くとみる。「待遇を改善し、保育士になりたい人を増やし好循環を生む必要がある」と話した。

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