「微遍路」と称して福井県内を徒歩で縦断した田中佑典さん=9月14日、福井県福井市宝永2丁目

 道で会ったおばあちゃんに飲み物の差し入れをもらった。宿が取れずにいると自宅に泊めてくれた人もいた。地方に一定期間滞在してローカルな暮らしを体験する旅のスタイル「微住」を提唱し、「微遍路」と称した徒歩による福井県内縦断を終えた福井市出身のプロデューサー田中佑典さん(34)=東京都。人との縁に支えられた約370キロの道のりで「都会の便利さより、地方の“非効率さ”にこそ本当の豊かさが眠っている」と実感を深めた。

 ―9月に大野市を出発して高浜町でゴールした約1カ月の旅。収穫は。

 旅を知った人からの紹介などで自然発生的に人がつながって、地域のキーパーソンに多く出会えた。ワーケーションの受け入れを考えている人だったり、お寺の住職だったり。新型コロナウイルスの影響で地方とつながりたい人が増えている中で、地域のどういうところを見せていくかを話し合うことができた。

 ―「微遍路」でキーワードに掲げた「負荷価値」の意味は。

 めんどくさいものをどんどん削って効率化させていったのが東京中心の今の日本。これから地方の時代だというときに、同じように効率性だけを求めてしまうと、ローカルとは名ばかりになってしまう。おしゃれなカフェやコミュニティースペースをつくるのではなく、非効率なものが本来のローカル。地域に根付く人や歴史、風土にこそ価値がある。(2023年春に)北陸新幹線が県内に延びて人が来やすくなっても、都合の良さだけを売りにしてはいけない。

 ―あえて徒歩で旅をして感じられたことは。

 川を渡ると道で会う人の空気感が変わるなど、福井をグラデーションで感じることができた。車を使ってピンポイントで移動しても分からない感覚。歩くという「負荷」によって土地柄を感じてもらう福井らしい旅の形に可能性を感じた。

 ―ゴールと同時に、来春に「微遍路」の復路編に挑むことを宣言した。その思いは。

 不思議と達成感がなかった。まだ見逃している地域もある。「やったー」で終わらせずに、僕みたいな人に協力してくれて、ご縁があってつながれた人にもらった恩をこれから返さないといけない。地域での関係づくりは、そういう出会いの繰り返しなんだと思う。

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