【越山若水】くちばしの折れたコウノトリが越前市白山・坂口地区に1970年12月飛来、後に白山小近くの水田に舞い降りる。児童たちはえさを集め観察日記をつけコウちゃんと呼び交流する▼同市粟田部町、日本鳥類保護連盟顧問の林武雄さんは自著「帰らぬつばさ」で、保護のため捕獲し兵庫県に移されるまでの“愛のドラマ”をつづる。コウちゃんの剥製が今、里帰りし市エコビレッジ交流センターで展示されており、手を合わせるお年寄りもいるとか▼林さんは「コウノトリには回帰本能があるのでは」と著していたが、2010年、40年ぶりに白山地区に飛来。翌年には福井県が飼育繁殖事業を開始する。9羽の放鳥を経て、今年6月には待望の放鳥2世が野外で巣立つ▼夢の達成に10年以上かかったものの、コウちゃんが飛来し50年の節目とも重なった。巣立ちに地域の人たちは「コウノトリは私たちの誇り」との思いをかみしめただろう。だが飼育に携わる福井県の獣医師木村美貴さんは福井市内での講演で改めて訴えた。「コウノトリを増やすことが目的ではなく、定着を里山の持続可能な未来につなげることが大切」▼地元の白山・坂口地区からは「ここからがスタート」と頼もしい声が聞こえる。地道な里山づくりに向けて心機一転との決意がにじむ。夢の続きの扉を、幸運を運ぶコウノトリとともに開いてもらいたい。

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