【越山若水】米国に「Qアノン」と呼ばれる集団がある。インターネットで根拠のない陰謀論を唱え、特定の個人や団体への嫌がらせや暴力をけしかける。大統領選でも過激な投稿が後を絶たない▼「民主党は子どもを人身売買している」「メディアは闇の政府に支配されている」「それと闘うトランプ氏は救世主だ」…。あまりに一方的で扇動的な主張は危険だとして、交流サイトのフェイスブックや動画サイトのユーチューブは、関連ページの削除を決定した▼ただいくら規制しても、別のページが立ち上がる可能性が高く、いたちごっこのケースもある。画期的な進化を遂げたネット技術は、世界に平和と理解をもたらすと期待された。しかし現実には対立や憎しみをあおり、時として紛争を仕掛ける道具として利用される▼こうした耐えがたい状況を目にして、ツイッターの共同創業者E・ウィリアムズはこう述懐する。「誰もが自由に発言し、情報を交換できたら、世界はよりよい場所になるはずだと思っていた。でもそれは私の思い違いだった」(「『いいね!』戦争」NHK出版)▼米大統領選まで2週間余り。共和党トランプ、民主党バイデン両候補は個別に有権者との対話集会を開いた。本来なら、ネットの暴走を沈静化する立場だが、相手を非難する中傷合戦の繰り返し。戦い終わればノーサイドとなるのか。不安は残る。

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