船橋の中で操船業務にあたる航海科職員

私たち海上保安官は、犯罪捜査や海難救助、海洋調査や交通管制など、様々な業務に携わりますが、それと同時に、巡視船艇の運航要員としての役割も担っています。
つまり、巡視船の運航に携わりつつ、犯罪捜査や海難救助などの業務を行っており、海上保安官一人ひとりが2足も3足も“わらじ”を履いているんです。

海上保安官のほとんどは、海上保安庁に入庁後、海上保安大学校(広島県呉市)や海上保安学校(京都府舞鶴市)などの教育機関で、一定期間の教育を受けて業務に関する科目のほか、船舶運航に必要な知識・技能を習得してから現場に配属されており、巡視船に乗船して運航するために必要な国家資格などを取得しています。

船の運航に必要な資格の範囲は、「小型船(ボート、水上バイクなど)」と、いわゆる「大型船」に大きく分かれていて、小型船は1人で操船できますが、大型船にはいくつかの役割の乗組員が必要となるのです。

意外と知られていないのが、大型船にあたる巡視船の運航業務。
巡視船を運航するには、主に「航海科」「機関科」「通信科」「主計科」という4科それぞれの役割を担う海上保安官が乗船して働いています。
そこで!皆さまに知っていただきたい、海上保安庁の「巡視船」を動かす海上保安官の仕事について、読者の皆さんがイメージしやすいように内容を少し掘り下げて紹介していきたいと思います!

題して、シリーズ「海業(うみわざ)」

第1回は、「航海科」について。
航海科は、巡視船の「航海士」や「船長」として業務にあたることになり、船の操縦や見張り、航海計画の立案、船体の手入れなどの業務を担当しています。
要は、目的地までの船が通る海上のルートをその時の天候や風の影響、浅瀬や障害物の有無などを勘案して決め、実際に舵(かじ)を握って船をコントロールする役割があります。
レーダーや双眼鏡、海図(海の地図)などを駆使して、船の現在位置を把握したり、他の船との衝突などを未然に防ぐ役割も担っています。

航海中は基本的に、巡視船の一番高い場所にある「船橋」と呼ばれる見晴らしの良い部屋で業務にあたるので、波が来る周期や遠くの景色を眺めることができて、一番船酔いしにくい(個人差あり)業務であると言われていたりいなかったり。
船の操船業務は、「ワッチ(Watch:見張り)」と呼ばれる3、4時間ごとの交替制の勤務形態となります。
このほか、甲板で行われる船の着岸作業なども、航海科が中心となって行われ、このことから航海科の職員は「デッキ(Deck:甲板)」と呼ばれています。
甲板で使うロープの結び方や加工技術は、航海科の腕の見せ所なんです。

船体の手入れについては、主に船の構造物の錆を取る作業やペンキ塗りを担当しています。
巡視船の近くで、一心不乱に鉄を磨いている海上保安官がいたら、その人は航海科です。
また、先輩に作業服がペンキで汚れているうちはまだまだ半人前と言われ、ペンキ塗りのスキルがかなり上がりますが、私生活でこのスキルを使う機会はほとんどありません・・・

船内での生活面で、航海科の「ボットム(Bottom:船底)」と呼ばれる初任職員は、基本的に「トイレ掃除」を担当しています。
巡視船の近くで「トイレにはそれはそれはキレイな女神さまがいるんやで~♪」と口ずさんでいる海上保安官がいたら、その人は航海科か“ただの歌好き”です。
なぜ航海科がトイレ掃除担当なのかは謎ですが、トイレを効率的に素早くきれいにするこちらのスキルは、私生活でもかなり重宝されます。
ちなみに、乗組員の命となる水の管理も航海科が担当しており、船内では姑がごとく他の乗組員の水の使い過ぎに目を光らせています。

いかがでしたでしょうか?
実は私うみまるも航海科。どんなにトイレをキレイにしても「べっぴんさん」にはなりませんでしたが・・・。
次回!シリーズ海業(うみわざ)、「やることなすこと几帳面“機関科”」
ぜってぇ見てくれよな!(敦賀海上保安部・うみまる)
 

関連記事