【論説】今年の“菊の祭典”はある意味、記憶に残るイベントになるかもしれない。

 10月9日から1カ月にわたって越前市武生中央公園で繰り広げられる2020たけふ菊人形は、新型コロナウイルスの影響で当初の計画を大幅に縮小して行うことになった。期間中、安心安全に運営するため実行委が協議を重ねて出した結論だ。来年の70回記念大会を盛大に開くためにも、今回は武生の菊文化を守り伝える重要な機会にしたい。

 たけふ菊人形の始まりは1952年にさかのぼる。もともと越前市(旧武生市)は北陸随一といわれるほど菊作りが盛んで、秋になるとさまざまなグループが寺の境内などで自慢の菊の出来栄えを競っていた土地柄。菊人形の先進地である大阪府枚方市をモデルに、当時の尾崎稲穂武生市長が開催を決めたという。

 会場では回を重ねるごとに施設を充実させ、大劇場や展示専門施設の見流館(現菊人形館)なども整備。展示は69年からNHK大河ドラマと連動したテーマ設定となり、80年から始まったOSK日本歌劇団によるレビューショーは、現在も人気を博している。

 2017年には入場料の無料化に踏み切り、近年8万人後半から11万人程度で推移していた入場者数が16万3千人と大きく増加した。福井国体の開催に合わせて会期を1週間延長した18年はさらに増えて25万1千人。展示テーマを子どもたちにも親しみやすい「童話の世界」に変更し、入館料が必要だった菊人形館の展示を屋外に移して無料化した昨年は、過去最高の28万3千人が訪れた。

 一つのイベントを長く続ければ、どうしてもマンネリ化という課題がつきまとう。大きな決断だったと思うが、料金体系を見直し展示テーマを刷新したことで、マンネリを打破し新たな菊人形の方向性を打ち出すことに成功したといえよう。17年以降の入場者数がそれを証明している。

 前回の勢いを継続し、今年も同様の路線で計画を進めていたが、新型コロナで大幅な変更を余儀なくされた。菊人形の展示数を減らすほか、OSK公演は3密を避けるため野外ステージで少人数によるミニレビューショーにする。食のコーナーや物販、遊具は土日祝日のみの運営となる。

 石川や富山県、近畿、中部方面で毎年行ってきた出向宣伝も今年は取りやめるという。県内外から大勢の観光客が訪れにぎわう―といった例年の菊人形とは様子が異なるかもしれないが、県内からの来場者に安心して楽しんでもらうには妥当な判断だろう。来年の70回大会を盛大に繰り広げるためにも、今年は安全最優先で無事に乗り切ることに注力してほしい。

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