【論説】福井県内を含め44都道府県の高齢者ら延べ約1万人から老後資金などをだまし取った疑いがあり、計約2100億円という巨額の被害が浮かび上がったジャパンライフ事件。創業者で元会長の山口隆祥容疑者ら元幹部ら計14人が詐欺の疑いで警視庁などの合同捜査本部に逮捕された。

 客が購入した高額な磁気ネックレスなどを会社に預けて貸し出せば、預金より高い利回りの配当を受け取れるという「レンタルオーナー制度」を展開。しかし実際には客が購入したはずの商品はほとんど存在せず、新規の客からの代金を配当に回していたとみられる。客が知人を勧誘すると報酬を得られるマルチ商法も取り入れていたという。自転車操業が常態化し、2017年12月に破綻した。

 数千万円の被害に遭った福井県内の80代女性は「夫と積み上げてきたお金だったのに、本当に悔しい」と憤った。11年の東京電力福島第1原発事故後には賠償金に着目し、福島県内の店舗数を3倍に増やした経緯もある。同県の被害額は約190億円と最多の愛知県(約285億円)に次いで多かった。事件の全容解明は無論、こうした人たちの被害回復も急がなければならない。消費者庁は販売預託商法を原則禁止する方針を示しており、二度と同様の事件が起こらないよう仕組みの整備が求められる。

 問題は、ジャパンライフがなぜ長年、預託商法やマルチ商法を続けてこられたかだ。言葉巧みに、手を変え品を変え勧誘してきたテクニックもさることながら、国会議員への献金など政官界やマスコミとのパイプも契約獲得に一役買ったとの指摘がある。05~17年度には元特許庁長官や元内閣府官房長、消費者庁の元課長補佐、全国紙の元政治部長らを迎え入れ、計約1億6千万円の顧問料を渡していたという。

 15年の安倍晋三前首相主催の「桜を見る会」に山口容疑者が招待されていたことも、そうした流れの一つだったのではないか。14年に消費者庁が行政指導をしているのに招待状が送られた。招待状には招待区分の「60」が付され、野党は過去のケースから首相の推薦枠だった疑いがあると追及。内閣府は招待者名簿が廃棄されており、答えられないとした。安倍氏も個人情報であることを理由に説明を拒んできた。山口容疑者らの逮捕を受け、菅義偉新政権の加藤勝信官房長官は「今から調べても確たることは申し上げられない」と述べるにとどめている。

 だが、招待状はチラシに印刷されるなど宣伝にフル活用された。元社員は「初めて来た人でも信用した」と証言している。なぜ、招待されたのか、曖昧なままでは政治不信は拭えない。

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