兄弟で越前打刃物の伝統工芸士となった黒崎真さん(右)と優さん=福井県越前市池泉町の黒崎打刃物

 福井県越前市が誇る伝統工芸「越前打刃物」の産地に今年、伝統工芸士の兄弟が誕生した。12年以上の実務経験と知識、実技試験を経て得られる“一人前の証し”。関係者によると、越前打刃物産地での兄弟認定は初めて。2人は「若い世代が憧れる職業にしていきたい」と話し、さらなる技術の向上に向けて切磋琢磨している。

 弟の黒崎優さん(40)は2019年2月に産地として11年ぶりの認定、兄の黒崎真さん(42)は2020年2月に認定を受けた。越前打刃物伝統工芸士会によると、現役の伝統工芸士は20人。引退した職人を合わせた歴代34人を含めても兄弟での認定は初めてとなる。

 「ものづくりが好きだった」という優さんは、22歳でタケフナイフビレッジ協同組合加盟の「カネ弘打刃物製作所」(現カトウ打刃物製作所)に弟子入りした。自らの銘が入った包丁を仕上げるベテラン職人に憧れ、すぐに仕事に熱中。「面白い仕事。一緒にやろう」と建築業で働いていた真さんを同じ工房に誘った。

 親方の下で優さんは鍛冶、真さんは研ぎを学んだ。「最初の8年間はひたすら同じ仕事を繰り返す日々。それが良い包丁を作る基礎になっている」と口をそろえる。一日の仕事が終わった後は、2人で工房に残って「いつか世界に認められる包丁を作ろう」と試作を繰り返した。

 優さんは2014年4月に同ビレッジの共同工房に「黒崎打刃物」を開業。翌年には、共同工房横に産地として40年ぶりとなる独立工房をオープンさせた。真さんも18年4月に自らの工房「STYLE-K」を設立して独立した。

 現在はそれぞれにオリジナルブランドを立ち上げ、海外を中心に販路を広げている。仕事場は別々になったが、今でも気になる原料の鋼材が手に入ると2人で商品開発することがある。兄弟によるコラボは付加価値となり、商品はすぐ品切れになる。かつて思い描いた「いつか世界に」という夢は現実になった。

 伝統工芸士の称号に兄は「まだ実感はない。認定を受けてもやることは同じ。切れ味を追求したい」とひたむき。弟も「先人に恥じない仕事をするだけ。若手もしっかりと育てたい」と前を向いている。

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