運用違反になる周波数から、慣れた様子の会話が聞こえた無線機=7月18日、宮城県気仙沼市

 「東日本大震災の後、復旧工事現場でアマチュア無線の不適切な利用が横行している」。宮城県気仙沼市の40代男性から河北新報(本社仙台市)の「読者とともに 特別報道室」に困惑の声が届いた。取材を進めると、不適切な無線利用は災害時の非常通信の妨げにもなり得ることが分かった。(河北新報 鈴木悠太)

⇒福井県内でも不適切利用が横行

 「(岩手県警)千厩署(せんまやしょ)の前でパトカー待ってだんだっけなー。やらいだ(やられた)」

 7月中旬、土曜の午後3時すぎ。男性宅のアマ無線機から、運転中とみられる男性2人の会話が聞こえた。1人が最近、市内から岩手県一関市方面へ向かう国道で前方車両をあおり運転し、摘発されたとの趣旨だった。

 別の周波数ではダンプカー運転業務のやりとりや車の購入に関する雑談など、約30分間に9周波数で会話が確認できた。男性によると、これでもいつもより交信の数は少ないという。

 この日の交信は全てコールサイン(個人や無線局の住所に当たる識別信号)を発せず、一部は禁止された周波数を使用。いずれも電波法が定めた運用に違反する行為だった。20年以上、アマ無線を趣味としてきた男性によると、震災後に違反行為が頻繁に確認できるようになった。

 会話には気仙沼市内の復旧工事名も頻繁に登場することから、使っているのは主に運転中の工事車両とみられる。男性は「復興工事の陰で恐ろしい数の違反がある」と顔をしかめる。

 日本アマチュア無線連盟宮城県支部(約1100人)の佐藤雄孝支部長(77)は「割り当て以外の周波数を使われれば、災害時に非常通信が聞こえないかもしれない」と危惧する。

 ■被災地で貴重な通信手段

 アマチュア無線はこれまで、電話などが通じない大きな災害時に被災地で貴重な通信手段となってきた。

 2008年の岩手・宮城内陸地震では、道路が寸断され一関市内で孤立した気仙沼市の自営業小野元さん(71)が、車載の無線機で警察などと交信。近くの約50人の健康状態などを伝え、円滑な救助につなげた。

 11年の東日本大震災でもアマ無線の非常通信が活躍。多くの自治体は、非常時の通信手段にアマ無線活用を防災計画に盛り込む。運用違反が相次げば、使える電波の独占や混信の恐れがあり、孤立地での安否確認や支援物資の要請などに支障が出かねない。

 小野さんは「被災時、情報の有無で安心感は全く違った。いざという時のためにも、ルールを守って無線を利用してほしい」と話す。

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