【論説】計算速度世界一のスーパーコンピューター(スパコン)「富岳」が、新型コロナウイルス対策のさまざまな場面で活用されている。効果的な感染防止策の構築などに向け、日本の技術力を最大限役立てたい。

 感染リスク低減へ、飛沫(ひまつ)の拡散経路を調べている神戸大や理化学研究所のチームが富岳を使用し、このほど中間報告をまとめた。不織布マスクと手作り布マスクで、せきをした際の飛沫の広がり方を計算し比較。不織布マスクには少し劣るものの、布マスクも7~8割の飛沫をキャッチできることが分かった。日常生活に密着した研究に富岳が活用されていることに意義を感じる。

 政府のコロナ対策分科会でプロスポーツやイベントの人数上限を議論した際も、富岳を使った感染防止策の効果分析が示された。プロ野球やJリーグ、大規模コンサートなどの集客面に影響を及ぼすことから、客観的なデータを根拠にしたかったのだろう。

 新型コロナの治療薬候補選出にも富岳の能力が生かされた。京都大と理研のチームが、既にさまざまな病気の治療や診断に使われている約2千種類の薬の中から、数十種類を選び出すのに富岳を使った。

 既存薬2128種類について、ウイルスが増殖する際に使うタンパク質と安定的に結合し、増殖を邪魔することができるかどうかを計算で推定。先代のスパコン「京(けい)」で1年以上かかる膨大な分子の動きの計算を富岳は10日で終了した。かつて世界トップだった京のはるか上を行く能力には目を見張るものがある。

 世界のスパコンの性能を比べる専門家プロジェクト「TOP500」の発表で、富岳が計算速度ランキング1位を獲得したのは6月。計算速度に加え、産業利用や人工知能(AI)、ビッグデータ解析に関わる指標もトップとなり、史上初の“4冠”を達成した。使い勝手の良さを追い続けた結果で、創薬や災害予測など幅広い分野での活躍が見込まれる。

 未来を担う県内の若い世代からも期待する声が聞かれる。気になる新聞記事を要約して感想を述べる活動に取り組む越前市武生五中では、生徒が富岳世界一のニュースを取り上げ「日本の技術力はすごい。コロナなど困難を解決し、世界を明るい方へ導いてほしい」とつづった。

 富岳の本格稼働は来年度の予定だが、新型コロナに関する研究は待ったなし。性能の高さを存分に生かして、収束に向け実効性のある成果へつなげてほしい。

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