【越山若水】「優美・慈愛・平和」というタイトルの石こう原型が際立つ。ほぼ等身大の女性3人が手をつなぎ互いに見つめ合う。福井ゆかりで近代日本を代表する彫刻家高田博厚のふくよかな女性裸像だ。福井市美術館で初公開されている▼この作品は、母校藤島高(旧制福井中)の生徒玄関内にある壁面に設置されている浮き彫りの原型。鎌倉市稲村ケ崎にあった高田のアトリエ兼住居に置かれていたもので現在は同美術館が保管している。制作された年は分からないが、晩年ではないかとみられている▼もう一つの母校、順化小の児童玄関前にも、ブロンズ像がある。「いのり(礼拝)」と名付けられた作品だ。創作意欲にあふれた最晩年の作品で、しかも高田作品の中では最も大きいとか。2017年の創立150周年記念式典の日に設置され、児童たちを喜ばせた▼2歳から18歳まで福井で過ごし上京。31歳渡仏し30年近く、近代彫刻の粋に触れる。欧州と日本の文化の架け橋を担う存在だった。高田が1981年、本紙に連載した「ふるさとの思い出」でこう語っている。「思想的には私はパリで大人になったと思っているが、その土壌は東京よりも、むしろ福井だろう」▼高田は、彫刻は前に立ち対話できる者にだけ語りかけてくれるものだと知人に語っている。生誕120周年の高田に思いをはせ、作品と対話できたらと思う。

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