第61期王位戦7番勝負の第4局で、木村一基王位(当時)と対局する藤井聡太棋聖=8月19日、福岡県福岡市(日本将棋連盟提供)

図(1)

図(2)

 将棋の藤井聡太棋聖が二つ目のタイトルとなる「王位」を奪取し、八段昇進の最年少記録を塗り替えた。木村一基王位(当時)との王位戦7番勝負。二冠に王手をかけた第4局42手目の封じ手を、福井県将棋連盟理事長の宮越和彦アマ四段(56)は「“常識外の一手”だった」と語る。棋聖戦第2局の42手目を“神の一手”と評した宮越四段に、今回の勝負も解説してもらった。さあ、あなたならどう指す?

 「『へぼ将棋 王より飛車を かわいがり』という川柳があるように、飛車は玉に次いで重要な駒。41手目=図(1)=の局面は、先手(木村王位)が後手(藤井棋聖)の飛車取りに銀をぶつけ攻めている場面。後手は飛車よりも価値の低い銀との交換は損で、2六飛と逃げるのが常識的でしょう」

⇒藤井聡太七段の「神の一手」に注目

 しかし、藤井棋聖の指した42手目=図(2)=は8七同飛成。8月19日、初日最後の封じ手を約35分にわたり熟考した末、“常識外”の一手とした。

 「8七同飛成は、飛・銀交換の駒損でも、直後の3三角で飛車を狙うという目標ができ、後手が主導権を握る展開になる」と宮越四段。「よほど読みに自信がないと決断できない一手。プロでも、こう指せる人は10人中1、2人でしょう」と続けた。

 結局、藤井棋聖は2日目の同20日、優勢のまま勝利を飾って2冠を達成した。「藤井二冠は42手目まで、自分が不利だと感じていたと推察される。『飛車を逃げても十分』ではなく、『飛車を逃げては苦しいので勝負しなければならない』と考えたのでは」

 つまり、飛車を取られないことを優先するよりも、飛車が動きづらくなるのなら銀と交換してでも勝負に出る―ということらしい。「この“常識外の一手”を決断し優勢な局面を築き上げた藤井二冠には、すごみすら感じた」と話した。

 一方で「千駄ケ谷の受け師」という異名を持つ木村元王位については「第1、3局では得意の受けで間違え負けてしまった。それで、受け一方では苦しくなるという焦りがあったのでは」と宮越四段。「受けの達人でさえ、藤井二冠の勢いに押された」と舌を巻いた。

 ■封じ手 

 日をまたいでの対局の場合、持ち時間の不公平をなくすため、初日の最後の一手を紙に記入して封筒に入れて封をすること。2日目の再開時に開封し、記入しておいた手を指して対局を続行する。タイトル戦では竜王、名人、王位、王将戦が2日制。

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