【論説】桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥、多田修平、金井大旺、寺田明日香…。これだけの国内トップ選手が一堂に福井県に集うスポーツ大会はなかなかない。8月29日に福井市の9・98スタジアム(県営陸上競技場)で開かれた第2回ナイター陸上競技会「アスリート・ナイト・ゲームズ・イン・フクイ」(福井新聞社特別協賛)。選手の疾走、跳躍を間近に観戦できる福井発の新しいスタイルの大会を、福井の夏のスポーツの風物詩として定着させたい。

 昨年始まったナイター陸上は、レース中に音楽を流したりDJが実況解説したりと、一般的な陸上大会と異なる趣向が凝らされている。「選手との一体感」をテーマに、フィールド内に観客を入れ、選手との距離を縮めた。クラウドファンディングサービス「ミラカナ」で集まった資金を選手の活動資金に充てるという国内の陸上大会初の試みは、全国から関心を集める。

 会場の県営陸上競技場は2017年9月に、当時大学生の桐生選手が男子100メートルで日本人初の9秒台を出したことから18年、「9・98スタジアム」の愛称が付いた。昨年のナイター陸上でも男子走り幅跳び、男子110メートル障害で計三つの日本新記録、女子100メートル障害で日本タイ記録が生まれ、福井陸協関係者が「モンスター競技場だ」と驚いたほど、好記録が出やすいスタジアムだ。

 昨年末に実施が決まっていた今回の大会は、新型コロナウイルス感染拡大で開催が危ぶまれた。収束が見えない中、観客を入れることに陸協内部でも慎重論はあったが、感染拡大防止策に万全を期すなどし、開催にこぎ着けた。観客数を昨年の半分以下に抑え、会場では選手、観客の検温を実施し、マスク着用、拍手での応援を求めたほか、観客の声援の代わりに、事前録音した選手コールや歓声を流すといった新たな演出で大会を盛り上げた。

 今大会は日本新記録こそ出なかったが、女子100メートル障害の優勝タイムは追い風参考ながら日本記録を0秒10も上回った。男子110メートル障害を制した福井陸協登録の金井選手は日本記録にあと0秒02に迫るなど、高速トラックでのハイレベルな争いは観客を魅了。出場選手からの反応も上々で、「応援してもらうとモチベーションが上がる」(ケンブリッジ選手)、「こういった大会が各地に広まれば」(桐生選手)と評価した。

 福井陸協は「他のスポーツも巻き込み、福井の夏を盛り上げる定番の催しにしたい」と意気込む。地方の組織でも創造と工夫で大きなムーブメントを起こせる地方発信のモデルケースとなるよう、今後の大会発展に期待したい。

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