【論説】党費を払っているのに投票できないのはおかしい―福井県内の党員や党友からもそんな不満の声が聞こえてきそうだ。

 自民党は安倍晋三総裁(首相)の後継を選ぶ総裁選で党員・党友による投票を見送り、14日に開く両院議員総会で選出する方式を決めた。国会議員394票と各都道府県連3票の141票を合わせ535票の票数となる。都道府県連には党員の意向を確認して投票を促すとしているが、国会議員の票が大勢を決めることになる。

 自民党内では、若手議員らが党所属議員の3分の1を超える140人余の署名を集め、党員・党友投票の実現を求めた。地方組織からも党員投票を求める声が上がった。若手議員や地方組織には国会議員主導で決める総裁選では、中央政治に不満を募らせる国民との乖離(かいり)を埋められないとの危機感があるのだろう。

 二階俊博幹事長ら党執行部は「片時も政治空白をつくってはならない」とこうした声を封殺した格好だ。二階氏は議員に党員獲得のノルマを課してきたが、これに逆行する決定だ。安倍首相は1日の総合防災訓練に出席するなど体調を維持しているように見え、新総裁が決まるまで公務をこなすとしている。ならば期間をできるだけ短くし、党員の声をすくい上げる方法もあったはずだ。

 当の総裁選は各派閥が動きだし、正式に出馬表明もしていない菅義偉官房長官の支持を決める派閥もある。候補者の政策も吟味しないで支持を決めていく姿は、旧態依然の派閥政治から抜け出せない自民党の現状を浮き彫りにしている。菅氏支持の理由に「政治の継続性」を挙げるが、内閣支持率は急落し、安倍政権の新型コロナウイルス対策を巡っても「評価しない」との声が6割近くに上っている。菅氏はその政権の中心にいる最重要閣僚だ。

 総裁選では、新型コロナ対策に加え、深刻な経済情勢や人口減少・少子高齢化対策、拉致問題や北方領土交渉といった外交課題など安倍政治の総括を踏まえ、候補者が論戦を尽くした上で投票行動を決めるべきだ。重要課題にどう取り組むのか、徹底した政策論議なくして、国民の負託に応えられるはずもない。

 政治空白の責任は突如退陣を表明した安倍首相にある。ただ、それ以前から野党が憲法に基づき要求した臨時国会の召集に一切応じてこなかった。政府、国会を挙げて国難に臨むことを放棄してきた。自民党は16日に新首相を選出する臨時国会を召集する方針という。この臨時国会を首相指名選挙だけに終わらせず、コロナや経済対策などを論議する本格的な国会としなければならない。

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