救助したゴムボートと短いオール

8月中旬の夕方ごろ、緊急の通報が入りました。
「ボートで沖へ出たが、風で流されて岸へ帰れない。手漕ぎのゴムボートには私と妻、2歳と1歳の子供も乗っている。」

これは急がなければ!
発生場所は福井県敦賀市水島沖とのことで、福井県水難救済会(民間の救助団体)への出動を依頼。
すぐさま救助艇が発動し、親子全員を無事に救出することができたのです。

親子はそのまま出港場所であった敦賀市色浜へ運ばれ、海上保安官によって詳しい事故の経緯などを聴いたのですが、当日は風速1メートル/秒ほどの弱い風で、波はほとんどない凪の状態。手漕ぎボートといえど帰れなくなるほどの天候には思えませんでした。
通報者の父親いわく、「だんだんと沖に向かって流され出して、漕いでも漕いでも岸に近付かない。最終的には出港場所も見えなくなり、小さな子供も乗せていたので死の恐怖を感じた。」とのこと。

海には、離岸流(※海岸に打ち寄せた波が沖に戻ろうとする時に発生する強い流れ)や潮の流れによって、見た目以上に強い力が作用し事故を惹き起こすことがあり、風が弱いからと言って一概に安全とは言い切れません。

今回もそのようなケースに当てはまるのかなあと思っていました。

最後に、漂流したボートを確認してみると、空気で膨らませるタイプのボートではあるものの、かなり大きなサイズのしっかりとしたもの。
家族4人で乗っていたことも頷けます。・・・と、ボートの上には2本のオールが。

「こ、これ、めちゃくちゃ短くないですか!!??笑」

と、思わず目を疑ってしまうほど短い2本のオール。

父親は、「そうなんですよ!すごく漕ぎづらくて全然進まなかったんですよ。」と。

それもそのはず。実はこのオール、カヤックなど幅の細い船体に使用するもので、2本を繋ぎ合わせて一本のものとして、真ん中を持ち左右交互にクルクルと回すような要領で漕ぐためのもの。

そんな本来必要な長さの半分にも満たないほどのオール2本、これをそれぞれボートの左右に付いている穴に差し込んだ状態で一生懸命漕いだものの、ほとんど推進力が生み出されず、弱い風圧にも押し負けて沖へと流されていたのでした。

幅の広いゴムボートで、ましてや分割した状態で使用できるオールではなかったのです。

「知らない」とは怖いもの。
どんなレジャーでも実は危険と隣り合わせで、知識なく遊ぶことはとても危ういのです。
最初は誰しも「初心者」ですが、是非一度スマホなどで検索して、そのレジャーの危険性や対策について調べてみてください。
知識があるのとないのとでは、事故の発生率は格段に違ってくるでしょう。

さらに、今回の事案で言えるのは、「このオール全然進まないなぁ」と感じた時点で、引き返す判断をすることでした。つまりは無茶をしないこと。

「これぐらい大丈夫だろう」という予測の甘さから起こる海難事故ってとても多いんです。

よろしくお願いします!(敦賀海上保安部・うみまる)
 

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