全国の純喫茶ファンに愛された「王朝喫茶寛山」を8月28日に閉じる伊坂さん夫妻。JR福井駅西口の再開発で「人が住み生活する駅前に」と願う=福井県福井市中央1丁目

 福井県福井市中央1丁目の「王朝喫茶寛山(かんざん)」が8月28日、通称「三角地帯」の再開発のため46年の歴史に幕を下ろす。大理石のビーナス像やステンドグラスが配された名前通りのレトロな雰囲気で、全国の純喫茶ファンから愛されてきた。「再開発後に今以上の雰囲気は出せない」と2代目の伊坂晃(てらし)さん(63)。妻の博美さん(60)とともに「人が生活してにぎわう街になってほしい」と願う。

 店は1974年にオープンした。三角地帯で戦後にミシン販売店と編み物教室、次いで食料品店と喫茶店を営んだ先代の修一さん(故人)と悦子さん(90)の夫妻が、木造2階の店をビルに建て替える際、地下1階で喫茶店を続けようと全国の有名店を巡り構想を練った。「王朝」をテーマにした鳥取県の温泉大浴場をヒントに、全国に例のない「王朝喫茶」として他店と差別化を図った。

 店の前にイタリアの画家ボッティチェリの「春」のレリーフ。大理石製のビーナス像をイタリアから購入して店の中央に据え、奥には横長の巨大ステンドグラスを配した。開店当時は1日600人が訪れ、1日中行列ができたという。

 2代目の晃さんは東京の大学卒業後に22歳で店を継いだ。車社会の進展で郊外に次々と大型店ができ、中心市街地のにぎわいが薄れても、博美さんとともにレトロな雰囲気の純喫茶を貫いてきた。

 三角地帯の再開発のため閉店が決まり、会員制交流サイト(SNS)などによる口コミで全国からファンが訪れた。関西方面から夫と来店した女性(35)は「非日常の空間で、空気がゆったりして居心地が良かった」と閉店を惜しみ、晃さんにサインをねだった。

 再開発後について晃さんは「新たな企業がビルに入り、マンションに多くの人が住み、買い物をして生活が成り立つ街になってほしい。人が住まないと街は死んでしまう」。博美さんは「すごくにぎやかだった昔の駅前のような活気を再び」と期待を込めた。最終日の営業は午前8時半~午後6時半(同6時オーダーストップ)。