写真右側は創業86年の福井薬局のビル。福井地震の被災経験から柱を太く頑丈にし、階段も広くして地震に備えた。写真左側は創業80年の加川薬局。三角地帯の再開発に店主は「人が集まるにぎやかな街に」と願う=ともに福井県福井市中央1丁目

 福井県福井市中央1丁目の通称三角地帯に店を構え、創業80年を超える老舗薬局2店が、再開発により8月31日で長年の歴史に幕を下ろす。空襲と震災からの復興、高度経済成長による発展、車社会の進展による郊外進出、バブル経済崩壊による低迷と、まちの変遷ととともに歩んできた。来る再開発に店主は「人に優しい街であり続けてほしい」と願う。

■福井薬局 屋上で育てた花のプランターを店頭に

 福井駅前電車通りにある福井薬局は創業86年。戦前の1934年に先代の故山本越彦さんがだるまや前に創業し、2年後に福井城の外堀を埋め立てた現在地に移転した。45年の福井空襲で店は被災し、戦後再開するも48年の福井地震で倒壊。それでももう一度再興し、76年には災害に備え地上5階、地下1階建ての頑丈な鉄筋コンクリートのビルを建設。1階で営業を続けた。

 現店主で2代目の幸彦(たかひこ)さん(87)の妻光子さん(78)は、ビルの屋上で育てた四季の花々のプランターを店の前に置き、電車通りに彩りを添えてきた。

 再開発に夫妻は「福井の人はみんなで助け合って戦災と震災を乗り越えてきた。福井らしい、人に優しい街になればいいな」と話す。

■加川薬局 近くの店主とイニシャル合わせたビルの名前

 県庁前と福井駅前電車通りを南北に結ぶ市道沿いにある加川薬局は、先代の故加川信一さんが1940年、福井駅南東の城の橋通りに「善治堂」の屋号で創業。空襲に遭い46年に現在地近くに移転し、福井地震で木造の店舗が倒壊後も再び店を構えた。71年には近くの靴店、玩具店の店主とともに、それぞれの名字のイニシャルをとった「NKKビル」を建設。漢方薬を豊富に取りそろえ、連日150人ほどの客が訪れた。

 65年に2代目店主となった正彦さん(79)は「お客さんと深く付き合わなければ薬剤師の仕事は務まらない」と、車社会化による郊外進出の波に乗らず、55年にわたり街の変遷に寄り添ってきた。「最もにぎやかだった80年代のような、人が集まりにぎわう街に再びなってほしい」と願った。