【越山若水】「大河は海に下りゆく」。福井県ゆかりの詩人三好達治の絶筆となった詩「春の落葉」の末尾の一節だ。三好を精通している文学関係者らを魅了し続けているようだ▼三好は1964年3月31日に「春の落葉」を書き上げ4月5日急逝する。雑誌の「小説新潮」6月号での発表後、直筆原稿は長く所在不明だった。このほど都内の親族宅で見つかり、県ふるさと文学館で初公開されている▼大谷大教授の國中治さんは「大変貴重な資料。発見されたことは稀少(きしょう)」と評価した。末尾の一節については「転変著しい時代と人生を忍耐強く生き抜いた文学者の最期を、これ以外は考えられないほど絶妙に表現した比喩として読まれることとなった。不思議な偶然であり、運命の皮肉でもある」と指摘する▼第一集「測量船」巻頭「春の岬」で三好は「春の岬旅のをはりの鷗(かもめ)どり 浮きつつ遠くなりにけるかも」とうたい漂泊の人生を予見。絶筆の末尾と併せ大詩人の運命の象徴ではと、三好に師事した石原八束(やつか)は論じていた▼坂井市三国町で5年間過ごし、再出発の地となる。「越前・三国 わが心のふるさと」と題する随筆を残して「土地柄の風味のあつたのがなつかしまれる」と思慕をつづる。今年、生誕120周年の三好。その文語調の叙情詩を詩人西脇順三郎は「言語の魔術」と表現したが、「大河」の魔術を読み解ければ。

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