第91期棋聖戦5番勝負の第2局、感想戦で対局を振り返る藤井聡太七段=6月28日夜、東京都渋谷区の将棋会館(日本将棋連盟提供)

 史上最年少17歳11カ月で将棋8大タイトル戦の一つ「棋聖位」を獲得した藤井聡太七段(18)。その強さを物語る手は数あるが、福井県将棋連盟理事長の宮越和彦アマ四段(56)は棋聖戦5番勝負の第2局、42手目に注目する。AI(人工知能)すら最善手に挙げず、県内の将棋ファンをうならせた一手を、改めて再現してもらった。

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 「藤井七段の強さは、“神の一手”とも呼ばれる素晴らしい一手を指せるところにある。その代表的なのが42手目。常識では考えられない手でした」。宮越四段は、いまだに驚きを隠せない表情でこう切り出した。

 「41手目の局面は、銀2枚と角が中央に効いていて互角。唯一『4五の桂馬』が宙に浮いているのがポイントです。その後の展開で、ただで(損せず)桂馬を手に入れることを目指します。3枚目の桂馬を手に入れれば手駒が増え、普通は後手が優勢になると考えます」

 しかし、ここで藤井七段が繰り出したのが「5四金」だった。この手のどこがすごいのか。

 「後手陣の守りの『4三金』を『5四金』と上げていく発想は、頭では分かっていても、今までの経験上リスクが高く、まず切り捨ててしまうのが常人の考えです。守りの要といえる金を攻撃の最前線に繰り出す手は、多少優勢になっても、攻められれば守りを弱体化させる状況に陥りかねない。その後の展開に自信を持ち、勝てると読んで指した一手だったんだと思います」

 藤井七段はこの「5四金」で流れを変え、棋聖位をたぐり寄せた。宮越四段は「今までの人が通った道ではなく、新しい道を切り開く感じ。令和という新しい時代に、新感覚の天才が出て来た」と言い切った。

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