【論説】米中の対立が再び激化している。2018年からの貿易摩擦で先鋭化した対立は、新型コロナウイルスの世界的な流行に加え、中国の香港統制強化でさらに深刻の度を増している。

 ポンペオ米国務長官が中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席を「全体主義の信奉者」と強く非難、双方が両国内の総領事館を閉鎖させる事態にまで発展している。懸念されるのは、南シナ海で米中両国軍がそれぞれ演習を行っていることだ。不測の事態を回避すべく、国防部門などの対話が欠かせない。

 確かに、中国の専横的な振る舞いは目に余る。南シナ海での軍事拠点化、新疆(しんきょう)やチベットでの少数民族の弾圧、一国二制度をないがしろにする香港国家安全維持法(国安法)など、習氏は米国に比肩する「近代化強国づくり」の目標実現に向け、なりふり構わぬまい進ぶりだ。

 一方、トランプ米大統領は国安法に対する制裁や人権問題への支援、台湾への武器供与承認、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)排除など矢継ぎ早に対中強硬策を繰り出している。中国への揺さぶりは11月の大統領再選に向けて保守層の支持を固めるためとの見方が専らだ。

 トランプ氏の最大の狙いは「コロナ隠し」だろう。ウイルス感染者は約442万人、死者は15万人超と世界で最も多い。対策遅れへの批判をかわそうと中国共産党の情報隠蔽(いんぺい)体質への批判に加え、世界保健機関(WHO)の「中国よりの姿勢」を非難。来年7月の脱退を正式に通告している。

 中国は米国の制裁に対して、その都度報復に出るなど応酬に躍起だが、米大統領選の行方を注視している状況ではないか。ただ、民主党候補のバイデン氏が勝っても、米国の中国たたきの流れは変わらないとの指摘がある。コロナ禍という実害を機に、党派を超えて中国共産党への警戒感はより高まっているという。

 米中の関係悪化に日本政府も懸念を強めている。総領事館閉鎖に際し、菅義偉官房長官は「世界第1位、第2位の経済大国である米中の関係は国際社会にとって極めて重要」と情勢悪化を望まない考えを示した。

 ただ、同盟関係にある米国と、かつてなく良好な関係にある中国との間で「踏み絵」を迫られる事態にならないかが危惧される。米国はオーストラリアとの外務・防衛閣僚会合で、対中包囲網で足並みをそろえた。日本は「自由で開かれたインド太平洋」を主導してきただけに、米豪協力を歓迎する一方、中国との関係悪化を懸念する声もある。

 コロナ禍で外交手段が限られる以上、今は慎重に見守るしかないが、双方を取り持つなど、水面下も含めた努力を求めたい。

関連記事