【越山若水】いつも行く散髪屋さんのドアが半開きになり、風鈴がつるされていた。「コロナ対策です。店内が密室にならないように」と店主。空気の動きを伝える風鈴には厄よけの意味合いもあり、今年は存在感を増している▼中国には竹の枝につり下げ、音の鳴り方で吉凶を占う「占風鐸(せんふうたく)」があった。仏教とともに日本に伝わり、寺院の屋根の四隅に掛ける風鐸になったといわれる。平安時代の貴族は魔よけとして屋敷の軒先につるしたらしい。風鐸がいつ風鈴になったのかははっきりしない。江戸時代までは金属製が多かったが後にガラス製や陶製も作られるようになった▼近年は窓を閉め切ったマンションやエアコンの普及もあり、その姿をあまり見かけなくなった。それでも、たまにチリンチリンと涼しげな響きを耳にすると心地よい▼越前町の越前古窯博物館では、越前焼の風鈴を並べたイベント「陶ふうりん」が開かれている。その数千個は北陸最大級。一つ一つ手作りで、おわん形や釣り鐘形などさまざま。音を鳴らす舌(ぜつ)と呼ばれる部分にも違いがあり、いろいろな音色を楽しめる▼福井市の足羽神社では願い事を記した木札を風鈴に掛け、成就を祈って奉納する「祈願風鈴」が行われている。中には、「コロナが早く終息しますように」と書かれた札も。やすらぎの音色と風にのって、疫病退散の切実な願いが届いてほしい。

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