【越山若水】福井藩が寛文2(1662)年に発行した藩札がある。発行年が分かる現存最古のものだ。福井市立郷土歴史博物館で開かれている企画展に展示されている▼福井藩最初の藩札は前年、4代藩主松平光通により幕府の許可を得て発行された。大火などからの財政難が理由だ。近年では福山藩で寛永7(1630)年に発行されていたことが文献上では確認されている▼福井藩の発行が呼び水となり、各藩が追従し発行が活発化する。「藩札の経済学」(鹿野嘉昭著)によれば、藩札は領国内で基本通貨として期待された紙幣と位置付けられる。いわば地域通貨だ。財政難を抱え続ける藩はなお多かったが、19世紀に入ると商品経済の発達に伴い、藩札は国産品の領外販売といった藩専売制と結びつく▼幕府の金、銀貨は慢性的な供給不足だったらしく江戸、大坂、京都での流通が限界だった。藩札によって通貨が中央と地方ですみ分けられた。由利公正が江戸出張に際し藩より一分金を支給されるが、金貨を手にしたのは初めてだったという逸話もうなずける(稿本福井市史)▼さて、コロナ禍に直面す都道府県。貯金に当たる財政調整基金を取り崩し残高が急減しているようだ。福井市が豪雪で財政難に陥ったことは記憶に新しい。今後のコロナ対策費を見据えれば、地方自治体の財政に関し議論を深めておくことも肝要だろう。

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