【論説】県内10JAが合併し4月にスタートした「JA福井県」は、トップの代表理事組合長がわずか3カ月で交代する異例の事態となった。理事を二分した対立を早期に解消し、道半ばのJA改革を推し進め、合併効果を最大限に発揮してほしい。

 混乱が表面化したのは5月下旬の理事会だった。JA福井県内の農産物の流通・販売などを巡り、理事を二分する対立が表面化。過半数の理事が前組合長の田波俊明氏に辞任を迫った。結果的に田波氏は辞任、新たに冨田勇一氏が新組合長に就任した。

 対立の要因には、組合員の所得にも直結する農産物販売を巡った改革が、合併後に進まなかった不満がある。

 合併する前、各JAは生産者から集荷し、直接、または県経済連を通して業者などに販売してきた。合併後の構想では、合併JAが県経済連の機能を持ち、業者などと直接取引する体制に改編。流通を簡略化することで効率化、コスト削減を図って組合員の所得向上につなげるはずだった。

 しかし、実際には主に県経済連を通す構造は変わらず、「合併前と変わっていない」との批判が高まった。

 理事らの危機感の背景には、農協を取り巻く環境の厳しさがある。農林水産省の調査では、全国の農協の約6割が2018年度決算で、農産物や生産資材の販売を含む本業の農業関連事業が赤字となった。本県のJAも例外なく厳しい状況にある。

 従来は、本業の農業事業の赤字を金融関連事業の黒字で補うことができたが、超低金利で収益環境が厳しくなり、本業の強化が急務となっている。

 この20年間で県内の農業就業人口は約2万人減少した。農業者の平均年齢は70歳を超えるなど生産者の高齢化も進んでいる。今後、若い世代の農業参入が重要となるが、魅力ある産業には農業者所得の向上が不可欠となる。JA福井県が発足時に掲げたのが「農業者所得の2割アップ」だったことからも、その重要性はJA内部で共有化されていたはずだった。

 今回、課題が表面化した経済事業は農業所得に直結する部分。それだけにJA改革は急がなくてはならない。

 巨大JAのスケールメリットを発揮できなければ、組合員のJA離れは確実に進む。近年、農業法人の大規模化により、JAを介さず肥料や農薬を安く購入するところもあるなど、農業者自身のコスト意識は敏感になっている。「JAを利用しても収入が増えないから利用しない」。農業者にそう思わせない改革こそが求められる。

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