【論説】北海道白老町のポロト湖畔に、アイヌ文化施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」が開業した。アイヌ民族の文化を継承・発信し、国民理解を促すための拠点として広く親しまれることを期待したい。

 先住民族アイヌをテーマとした初めての国立施設で、愛称の「ウポポイ」はアイヌ語で「大勢で歌うこと」を意味する。当初は4月に開業する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2度にわたって延期となり、待望のオープンとなった。

 さまざまな物品を展示する「国立アイヌ民族博物館」と、伝統的な生活様式や芸能が体験できる「国立民族共生公園」などからなり、敷地の広さは札幌ドーム2個分の約10ヘクタール。自然に囲まれた山や川など水辺に近い場所に拠点を構えていたアイヌの人たちの暮らしぶりを身近に感じることができる施設を目指しているとあって、規模の大きさに驚かされる。

 博物館には独特の民族衣装や工芸品、祭具など約1万点が収蔵され、このうち約700点を展示。「くらし」「歴史」「しごと」などテーマごとに構成されており分かりやすい。

 民族共生公園は、伝統的な踊りや楽器の演奏を見せる体験交流ホールや、伝統的な家屋「チセ」が並ぶコタン(集落)などからなっている。アイヌの生活を体感できる内容に工夫の跡がみられ、子どもたちの教育面でも有効と思える。

 本紙と子ども向け紙面の記事交換をしている北海道新聞のこども記者が開業前に訪れ、アイヌ民族の伝統楽器「ムックリ(口琴)」作りに挑戦した。建物の至る所にアイヌ文様があしらわれ、案内表示にアイヌ語がふんだんに使われている施設のこだわりも目の当たりに。「アイヌ語の小文字表記の決まりなど文化をもっと知りたくなった」と感銘を受けた様子だった。

 アイヌを巡っては昨年4月、「アイヌ施策推進法」が成立。法律で初めてアイヌを「先住民族」と認めた。言語や儀式など独自の文化をアイヌ以外の多くの人たちに知ってもらい、民族の誇りを持てる社会を築くのが目的だ。その目的に沿った新たな施設としてウポポイの果たす役割は大きいといえる。

 一方、新法では国連が先住民族の集団の権利としている「自己決定権」や「教育権」には触れていないため、アイヌから「不十分な法律だ」との声も上がっている。国民理解がさらに深まるよう、施設開業が一つのきっかけとなることを望みたい。

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