【越山若水】世界の年縞(ねんこう)研究をリードする中川毅(たけし)さん(立命館大古気候学研究センター長)が学生時代、水月湖に寄せた感想だ。「年縞堆積物は美しい。その美しさを直感的に理解するのに、とくに訓練も知識も必要ではない」(「時を刻む湖」岩波書店)。湖底にたまった泥のしま模様である年縞は7万年分45メートルにわたり連続して堆積する。奇跡の湖だ▼県年縞博物館(若狭町)の学芸員、長屋憲慶(かずよし)さんは物差し、度量衡の歴史をまとめている。度量衡統一を日本で最初に成し遂げたのは豊臣秀吉だ。経済活動の掌握のために太閤検地を行う。京枡(ます)という一升枡が定められる▼長さ、重さも世界同一基準となり学術やモノづくりは飛躍的に向上する。メートル、キログラムの基準は、原器といわれるモノから光などを利用した情報に取って代わっている▼1998年に新たな物差しが登場する。歴史、考古、地質学分野で年代を決定する世界標準「イントカル」だ。水月湖の美しい年縞は研究者たちの苦難の挑戦によって2013年イントカルに採用された。水月湖が地質学などのグリニッジ天文台といわれるゆえんだ▼開館2周年を前に研究の体系的な解説書が発刊された。中川さんは世界で唯一の大規模な博物館であり世界の年縞研究を発展させる使命を担う、と改めて決意を披露している。世界の「レイク・スイゲツ」。福井の宝だ。

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