【越山若水】「海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。そして母よ、仏蘭西(ふらんす)人の言葉では、あなたの中に海がある」。詩人、三好達治の処女詩集「測量船」に収められた「郷愁」の一節だ▼日本語の漢字「海」には「母」の文字が隠されている。同じように、フランス語の「母=mère」と「海=la mer」はつづりが似ていて、発音も共通している。海は生命の母、万物の生みの親―という民族を超えた言語感覚に気づき、三好は詩にしたためた▼私たち人間がすむ地球は「水の惑星」と呼ばれる。地表の3分の2は水で覆われているからだ。そのうち淡水はわずか2・5%に過ぎず、大部分は海水が占めている。生物の起源は海にあるとされ、そこから陸へ空へと進出した。海はまさしく母なるふるさとである▼きょうは「海の日」。海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う国民の祝日である。あれっと思う人も多いだろう。1995年の制定当時は7月20日。後に7月第3月曜日に変更されたものの、今年は東京五輪の開催に合わせて「スポーツの日」ともども移動した▼五輪の1年延期が決まり妙に拍子抜け。さらに新型コロナの流行で海へ出かける気分もそがれる。とはいえ最近、使い捨てプラスチックごみの海洋汚染が世界的な問題になっている。母なる海のピンチを救うべく、地球環境を考える一日にしたい。

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