【論説】新型コロナウイルス対策としての観光支援事業「Go To トラベル」を巡り、国民の6割超が「延期」を求めているのに、国は一向に耳を貸さず、22日から東京発着の旅行を除外した形でスタートさせようとしている。

 東京の除外は新規感染者数が過去最多になるなど、第2波ともいえる様相だけに当然だろう。ただ、東京の隣県や大阪府などでも急増しており、医療体制が脆弱(ぜいじゃく)で重症化しやすい高齢者の割合が高い地方にとっては懸念が尽きない。

 共同通信社が実施した全国電話世論調査で「全面延期すべき」との回答が62・7%に上ったのも、国民の多くが不安に思っているからにほかならない。感染は大都市部の若者から中高年層、さらには地方へと広まりつつある。安全、安心があって、そこにおもてなしが備わってこそ旅行を楽しむことができる。政府は国民の声にもっと耳を傾け、感染拡大のリスクに向き合わなければならない。

 土壇場で東京を除外するなど、政府の対応は場当たりそのものだ。これまでの政府のコロナ対応に関して、世論調査では「評価しない」が59・1%と「評価する」の35・7%を大きく上回っている。飲食業界を支援する「Go To イート」で事務委託先の公募を来週以降に延期するなど整合性も見えてこない。

 安倍晋三政権の迷走ぶりが再び繰り返された格好だ。感染防止と経済の両立にどう取り組むのか、明確な戦略を持ち合わせていないからだろう。そもそも、このキャンペーンは4月の閣議決定の際、「感染症の拡大が収束し、国民の不安が払拭(ふっしょく)された後」と明記していたはずだ。

 ただ、観光業界からは収束まで「持ちこたえられない」といった声も相次いでいる。倒産や廃業に追い込まれた業者も少なくない。ならば、全国知事会から出された「県内や近隣県から観光の需要喚起を段階的に広げるべきだ」との声を重視する必要がある。政府はそのためにキャンペーンの予算を各自治体に配分することも検討すべきだ。

 感染状況は日々悪化している。政府は一度発表したからと、こだわってはならない。感染がさらに深刻化するようなら、ためらわず除外地域の拡大や事業の中止に踏み切らなければならない。国民の命が第一を再度肝に銘じるべきだ。

 西村康稔経済再生担当相は8月1日から予定するプロスポーツやイベントの入場者数の制限緩和について「慎重に考えないといけない」と再検討する意向を示した。「緩和すれば(大勢の)人の移動が起こる」との理由だ。観光もしかり。感染が拡大すれば「人災」のそしりは免れない。

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