【越山若水】「味絶好」「味尤(もっとも)勝レリ」。福井県の三方五湖産のウナギは質量とも優れていると、近世に地元や江戸の文書で紹介されていた。今でも料理店はあるが湖での漁獲量は激減した。ウナギに何があったのだろう▼歴史を調べた若狭三方縄文博物館によると湖周辺は鳥浜貝塚をはじめ縄文時代の遺跡の宝庫だが、ウナギの骨は見つかっていない。太平洋側では約9000年前には出現し、幅広く分布していたが、日本海側にはほとんどいなかった。海流が影響していたとみられる▼湖周辺の古文書に初めて登場するのは、江戸時代初期の慶長14(1609)年。以後爆発的に増え、久々子湖から京都まで運ぶ「ウナギ街道」を切り開く商人まで現れた。だが明治以降、漁獲量は不安定になり放流が行われるようになった。今では、稚魚のシラスウナギの遡上(そじょう)は途絶えたとの調査報告もある▼稚魚の減少は全国的な傾向だ。乱獲や河川環境の悪化に加え、地球温暖化など海洋環境の変化によってウナギの回遊に不具合な状況が起きているとの見方もある。ニホンウナギは絶滅危惧種になっているほど危機的状況だ▼あすは土用の丑(うし)の日。昔から夏ばてに効くといわれ、かば焼きに舌鼓を打つ家庭も多かろう。日本人がこよなく愛するウナギの食文化を絶やさず、いつまでも食卓や料理店で味わえるよう、資源の保護にも心をとめたい。

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