【越山若水】ウィンブルドンといえば、誰もがご存じ、テニスの聖地である。第1回の全英選手権大会が開かれたのは1877年春のこと。日本の元号では明治10年、西南戦争の真っ最中だった▼しかしその地が農園に変わったことはあまり知られていない。第2次大戦のとき、英国はドイツの潜水艦に封鎖されてしまった。飢えた市民は食糧配給に長い列をつくり、テニスコートは畑に転用された。これに懲りた英国はその後、穀物自給率100%を達成した▼この話は作家、井上ひさしさんがエッセー集「社会とことば」(岩波書店)で「経済制裁」を論じる題材として取り上げたもの。国際紛争が起きた場合、昔なら軍事衝突に発展したが、昨今は外国貿易や国際金融への依存度が高く、経済制裁に取って代わったという▼実際の措置は、輸出入の部分的または全面的停止、在外資産の凍結、金融機関への融資禁止、優遇関税の廃止など多種多様だ。中でも最も効果的なのが食糧輸出入の禁止とされる。今や世界の国々が経済制裁をちらつかせ、特に米国は経済封鎖を多用しているらしい▼香港自治を抑圧する中国に対し、トランプ米大統領は制裁を可能にする法案に署名した。大統領選向けの強硬姿勢とも見られるが、米中貿易合意は白紙に戻るのか、制裁の応酬が始まるのか、南シナ海の対立は? 2大大国の確執から目を離せない。

関連記事