「狐の玉」に関する論文をまとめた金田久璋さん(右)と「狐の玉」を祭る阿弥陀寺の大久保光由住職=福井県美浜町丹生の同寺

 福井県の嶺南地方で今も続く土着の信仰「狐の玉」について、美浜町佐田の民俗学者金田久璋さん(76)がこのほど、論文をまとめた。狐の玉は家に祭ると幸福をもたらすというキツネの毛の塊とされ、信仰対象となっているのは全国的にも珍しいという。金田さんは「今日まで残った貴重な信仰を知ってもらえれば」と話している。

 金田さんは1980年ごろ、美浜町丹生の阿弥陀寺にある狐の玉を初めて見た。その後、町史の編さんなどを通して町内各地に現存していることを知り、昨夏から論文を書き始め今年5月に完成させた。

 キツネは稲荷大神の使いとして祭られており、嶺南では江戸時代から稲荷信仰が広がったとされる。稲荷信仰との関わりは分からないが、狐の玉への信仰も同時期に広がったようで、家の神棚などに祭ると繁栄が訪れる「福の玉」として信じられてきたという。

 金田さんによると、狐の玉は美浜町や小浜市、おおい町、高浜町の民家や寺で約10件確認したが、県外で同様の事例は見つけられないという。美浜町丹生の阿弥陀寺には、大久保光由住職によると1945年ごろに浜辺の松の枝に引っ掛かっていたという狐の玉が祭られている。小浜市中井の民家の神棚で祭っている二つの白い玉には、明治11(1878)年に「白狐の玉を手に入れたらお金持ちになれると思ったので(知人から)購入した」と記した紙も添えてあるほか、キツネが玉を取り返しに訪れた民話も残っているとしている。

 金田さんは「全国でも県内でしか見られない貴重な信仰といえる。論文を読んで、自然を敬う気持ちを大切にしてもらえたら」と話していた。論文は来年3月に発刊される伏見稲荷大社(京都)の機関誌「朱」に掲載される予定。

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