【論説】東京や首都圏の新型コロナウイルス感染者が再び急増している。3桁の高水準が続く東京では感染経路不明者が多くを占め、市中感染拡大の様相を呈している。大阪府など都市部に加え、地方での増加傾向も顕著になってきた。

 2カ月半にわたって感染ゼロだった福井県内でも2人の感染が確認された。県によると、東京滞在時に感染したとみられる。杉本達治知事は「首都圏などへ訪問する場合は慎重に判断を」と呼び掛けているが、県境をまたいだ移動が可能になっている以上、首都圏などからの来県者にどう対応するかも課題だ。

 懸念されるのは、国、東京都の双方とも具体的な対策を打ち出していないことだ。無策どころか、菅義偉官房長官が感染急増を「東京問題」と称し、片や小池百合子都知事が「むしろ国の問題」と反論。互いに責任を放棄するような応酬であり、許されない。

 小池知事はPCR検査数を大幅拡大した結果、感染者数が増えたとしている。しかし、緊急事態解除後に防止策を打たなかったことに起因するとみるのが専らだろう。重症者数や死亡数が少なく抑えられ、若者を中心に無症状・軽症者が多い状況なら対処可能との受け止めを示している。

 ただ、都内では40代以上の感染者が増えつつある。さらには、陽性の判明後に連絡が取れなくなっている人がいるという。無症状者が地方に足を運び、感染を拡大させる恐れは否めない。都は集団感染が起きたホストクラブなどへ市区町村が休業要請した際支払う協力金の補助を含む補正予算案を公表したが、既に市中感染に移行した段階であり、遅きに失している。

 国の対応遅れも目に余る。西村康稔経済再生担当相は接待を伴う飲食業に関し「特別措置法に基づく休業要請を検討すべき段階にきている」との認識を示した。だが、あくまで十分な感染防止策を講じていない店に対してで、近く感染症対策分科会で専門家の意見を聴取した上でという。

 地方からは、国が前倒しして22日から始める「Go To キャンペーン」に危惧の声も上がっている。西村氏は8月1日をめどにプロスポーツやイベントの入場人数の制限を一層緩和する方針に関して、専門家の意見を聞いた上で改めて判断すると述べたが、キャンペーンについても早急に意見を聞くべきだ。

 東京・新宿の劇場で上演された舞台での集団感染では濃厚接触者が850人に上るなど大規模イベント開催のリスクは大きい。経済は重要だが、再流行が深刻化すれば、結果的に再度経済活動がストップしかねない。ここは立ち止まって対処方針を練り直すべきだ。

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