【論説】政府は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を多く排出する非効率な石炭火力発電所を、2030年度までに段階的に休廃止する方針を表明した。

 気象災害が多発し「気候危機」を招く温暖化対策として国際社会にアピールする狙いがある。だが全廃にまでは踏み込まず、電力の安定供給には再生可能エネルギー(再エネ)の拡大など課題が山積している。「脱炭素社会」への道筋を明確に示し、取り組みを強化する必要がある。

 地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」に基づき、各国に温室効果ガスの排出量削減が求められている。

 石炭火力について、英国やフランスに続いて、ドイツ議会も38年までに全廃する法案を可決した。欧米を中心に、石炭火力への融資をやめる金融機関も増えている。「脱石炭」は世界的な潮流だ。

 日本は地政学的なリスクが低く、コストも安いことから石炭火力を主要電源の一つと位置づけてきた。11年の東京電力福島第1原発事故以降、一段と依存度が高まり、18年度の発電量は全体の32%を占め、液化天然ガス(LNG)火力の38%に次ぐ規模だ。

 ようやく「フェードアウト(段階的に縮小)」へ向け動き出した形だが、国内にある140基の石炭火力発電所のうち、休廃止するのは非効率な114基のうち100基程度。CO2排出量が少ない高効率な設備や、新しく建設するものは運転を認める方針だ。

 「資源がない国として火力は調整力として有用な電源。高効率化を図り、エネルギーのベストミックスをつくっていく」(梶原弘志経済産業相)という。

 ただ、効率的な石炭火力でも天然ガスの約2倍のCO2が出る。国内での発電所新設に加え、発展途上国への輸出も継続する。支援の要件は厳格化される見通しだが、国際社会の理解を得られるかは分からない。

 政府の現行計画では、30年度の発電量に占める石炭火力の割合は26%に引き下げる。とはいえ、電力の安定供給を図りながら脱石炭を進めるのは容易ではない。

 新たな規制の導入や早期退出への誘導策の創設を検討。太陽光など再エネの利用を加速するため、送電線の利用ルールも見直す方針だ。近く設ける有識者会議で有効な具体策を打ち出してもらいたい。再エネ普及を後押しする技術開発も急がれる。

 また政府は、CO2を排出しない原発の再稼働も進める方針だが、再稼働に当たっては十分な安全対策と地元の理解が欠かせない。

 現行のエネルギー基本計画は来年にも改定される。コロナ禍後の経済社会の在り方も見据え、脱炭素への議論を深めたい。

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