【論説】昨年7月の参院選広島選挙区を巡り、東京地検特捜部は公選法違反(買収)の罪で前法相で衆院議員の河井克行容疑者と、妻で参院議員の案里容疑者を起訴した。これで買収事件の舞台は公判に委ねられる。民主主義の土台である公正な選挙が巨額の現金でゆがめられたのか、真相解明が求められる。

 起訴状によると、克行被告は案里被告を初当選させるため、昨年3~8月に地元県議や市議、後援会関係者ら延べ108人に票の取りまとめを依頼するなどして計2900万円余を渡し、案里被告はうち5人に対する170万円の提供を共謀したとしている。

 併せて、克行被告は案里被告陣営の選挙運動を取り仕切った「総括主宰者」と認定。裁判で認められれば、通常の買収の法定刑より重い「4年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金」が課せられる。

 裁判で克行被告は、昨年4月に統一地方選があり、「陣中見舞い」や「当選祝い」だったと買収目的を全面否定。これに対して特捜部は▽参院選前の6月に現金を渡したケースが集中している▽統一地方選と無関係の議員らにも提供されているーなどから、そうした主張は成り立たないとし、全面対決となるもようだ。

 問題は、選挙前に自民党本部が案里被告側に、同じ公認候補の10倍もの党資金1億5千万円を送金。これが買収資金の原資になったとの疑念に対して、党総裁である安倍晋三首相や党執行部が支出の経緯や使途について曖昧にしたままにしていることだ。

 首相か二階俊博幹事長の判断との見方が専らだが、首相は法相への起用については陳謝したが、党資金に関しては「問題ない」と強調。一方の二階氏は当初「党勢拡大のための広報紙の費用に充てられた」と述べたものの、陣営の法定報告書に使途が記載されていないことが分かると「細かくは承知していない」などと発言を後退させた。

 1億5千万円の8割に当たる1億2千万円は政党交付金で国民の税金で賄われている。こんないいかげんな説明で国民が納得するはずはない。調査を尽くし説明責任を果たすべきだ。

 一方、夫妻から現金を受け取った県議や市議らの刑事処分を見送るとの検察側の方針にも批判の声が上がっている。責任を取って辞職した首長や議員もいる中で、全員「無罪放免」でいいのかとの指摘がある。

 検察側が、克行被告から一方的に渡されたり、既に返金したりしている状況を考慮したとみられる。広島県民の失望の深さをおもんぱかるなら、刑事責任の有無は別にして、関わった全ての人が改めて襟をたださなければならない。

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