2004年沖縄県生まれの男性のデビュー・シングル。2020年3月に中学校を卒業したばかりで、少年のようなあどけない顔立ちだが、歌声を聞くと大志を抱く二十代の青年像が思い浮かぶ。それほど真っ直ぐな歌声が魅力的なのだ。

 表題曲は、明治六年政変から西南戦争にかけての西郷隆盛の晩年をテーマとした歴史ものの勇敢な曲想の演歌。戦況が厳しくなる様子や、戦争が終わってからの人々の追想を活弁士さながらドラマティックに歌い進めるという、尋常じゃない歌唱力を必要とする楽曲だが、クセをつけず歌うことで、勝者や敗者への思い入れなくただ事実だけが伝わってくるようだ。今はこの素直さが彼らしくて良いし、この数年後、さらにダイナミックに聞かせる持ち歌になることも楽しみだ。

 カップリングの『希望(ゆめ)は叶う』は、「恐れるな止どまるな 進むのだ」と、石原の門出を祝うような明朗な曲調の演歌。明るく伸びる歌声と、随所に想いを抑えるような静かな歌声の使い分けが絶妙で、この辺りのセンスの良さからも更なる飛躍を予感させる。

 正統派で歌いやすい『希望は叶う』ではなく、あえて難曲の『田原 城山 草枕』をデビュー作にしたことも、期待の大きさの表れだろう。彼の綺麗な歌声を聴けば、周囲の信頼できる人の助言を聞き入れて全力で頑張ってみようと思えるはず。

(エスプロレコーズ 1182円+税)=臼井孝

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