【越山若水】米国映画を代表する名画に「風と共に去りぬ」がある。南北戦争のころの南部を舞台に農園主令嬢の半生を描いている。令嬢スカーレットをビビアン・リー、相手役のレット・バトラーをクラーク・ゲーブルが演じ世界中を魅了し、今も人気が高い▼1939年に公開され、アカデミー賞を多くの部門で受賞した。原作はマーガレット・ミッチェル。デビュー作でしかも唯一の長編小説だった。36年に発表されると国内外で売れに売れ世紀のベストセラーとなり、ピュリツァー賞も受賞している▼絵に描いたようなアメリカンドリームにも映るが、小説、映画ともに発表と同時に黒人奴隷の描き方などに侮蔑的な表現がある、と批判もあったようだ。今日でも拭いきれてはいなかった▼黒人男性が白人警官に暴行され死亡した事件は記憶に新しいだろう。全米に人種差別への抗議が広がったのを受け、動画配信会社が人種偏見を含んでいるとして「風と共に去りぬ」の配信を一時停止。本編前に時代背景などの解説動画を付け加え、作品の配信を再開している。歴史的な文脈を知った上で、観賞し理解を深める試みは意義深い▼名作の名作たるゆえんとする好機だろう。「あしたは今日とは別の日だから」(鴻巣友季子訳)。あすに希望を託すスカーレットのセリフだ。心の糧としてコロナ禍への不安、豪雨の脅威を乗り切りたい。

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