【論説】新型コロナウイルス禍が収まらない中で行われた東京都知事選は、現職の小池百合子氏が過去2番目に多い約366万票を獲得し圧勝した。

 6日には報道陣の取材に応じ「新型コロナ対策で都民の命や暮らしを守り、経済戦略を考えたい」と2期目の抱負を述べたほか、安倍晋三首相との会談でコロナ対策や東京五輪・パラリンピックに関して今後の協力方針を確認したという。

 ただ、小池氏によると都内で3桁台が続く感染状況について緊急事態宣言の再発令といった話題は出なかった。隣県や地方では「東京由来」の感染の広がりに不安の声が上がっている。都民に都外への不要不急の移動を控えるよう求めてはいるが、それだけでは不安解消には程遠い。首都のトップとして感染防止への具体策発信が欠かせない。

 その一つが選挙中に目玉公約に掲げた、米国のような「東京版CDC(疾病対策予防センター)」の創設なのだろうが、具体像は見えてこない。そもそも、都の貯金に当たる財政調整基金はこれまでのコロナ対策で10分の1以下に減少、財政的な余裕はなく、大風呂敷を広げただけに終わる可能性も否定できない。

 財政面でいえば、数千億円ともされる東京五輪の追加負担問題も重くのしかかる。コロナの感染が世界中で加速する中、開催の可否を含め、都民が納得する透明性のある意思決定が求められている。

 選挙戦は感染予防の観点から制約が大きかったものの、小池氏は「オンライン選挙」に徹する一方、メディアを通じてコロナ対策で陣頭指揮をとる姿を連日アピールしたことが奏功。自民、公明の国政与党が独自候補の擁立を見送ったのに加え、野党が候補者の一本化をできなかった点も小池氏に有利に働いた格好だ。

 コロナ対策では当初、国を主導するかのような言動でリーダーシップを誇示し都民の支持を得た。だが、ここに来て、看板の「東京アラート」を廃止。従来の目安を見直し、新たなモニタリング指標を公表した。数字の明記を見送ったことの説明は不十分であり、かえって都民や国民の不安を増幅させたのではないか。

 都はコロナ以外にも、急速に進む巨大都市の高齢化問題や、今後30年間に70%の確率で起きるとされる首都直下型地震などへの対策も待ったなしだ。コロナ禍で一極集中のリスクや脆弱(ぜいじゃく)さが鮮明になる中、どう是正していくかにも積極的に関わる必要がある。

 小池氏には圧勝に慢心することなく、異論にも耳を傾ける寛容さを求めたい。366万票に応えるためにもキャッチフレーズ駆使やパフォーマンスありきから脱却すべきだろう。

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