新型コロナの感染拡大以降、簡素化が進む葬儀について話し合う僧侶ら=6月14日、福井県越前市の金剛院

 「通夜・葬儀とも近親者で執り行いました」―。福井新聞本紙のお悔やみ欄でも、こうした文言が目立つようになった。新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、葬儀の簡素化が進んでいる。危機感を抱いた福井県内の僧侶たちが「小規模葬でよいのか?」をテーマに話し合い、葬儀の意義をどのように社会へ発信していくべきか模索している。

 ■傾向に疑問■

 6月14日、越前市の曹洞宗金剛院には曹洞宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派の3宗派から12人の僧侶や門徒が集まった。宗派を超えた僧侶でつくる「TERRAねっと福井」(佐々本尚代表)主催で、この日は3度目の会合だった。

 佐々本代表は「家族といえども亡き人のすべてを知っているわけではない。誰が通夜葬儀に参列するかは遺族が決めるのではなく、生前に世話になるなどして見送りたいと感じる人が決めるべきでは」。簡素化の傾向に疑問を感じていた中で仲間からの呼び掛けもあり、話し合いをすることにした。

 ■収入減の危機■

 会合では、ある僧侶は小規模葬の流れについて「葬儀は義理や付き合いで参列するケースが増えた。本当に悲しんでいる肉親だけでという気持ちが働いている」と分析した。「葬儀が命の尊厳を感じられない場になっているなら、責任の一端は僧侶にある」とも指摘。普段からの僧侶と檀家(だんか)、門徒の付き合いが葬儀の雰囲気につながっているとした。

 経済的な不安に関する意見も出た。ある僧侶は「小規模葬になれば僧侶の仕事が減り、収入減になる。寺の存続が難しくなる」。

 ある門徒は「寺の収入支出をきちんと門徒に見せなければ『坊主まるもうけ』の幻想は消えない」と、寺の経営の在り方を再考すべきではと提言した。

 ■寺が消滅する■

 小規模葬を巡る僧侶たちの議論は5月末にも行われ、たんなん夢レディオで放送された。佐々本代表は「小規模葬でよいのか、通夜葬儀の意味は何なのか、広く考えてもらうきっかけにしたかった。僧侶たちも答えを出せずに悩んでいることも伝えたかった」と話す。今後は通夜葬儀に関する一問一答などリーフレットを作成し、葬祭場や県内の寺などに配布する予定。

 「新型コロナによって寺の問題点が浮き彫りになってきている」と指摘するのは、「寺院消滅」などの著作がある僧侶の鵜飼秀徳さん(京都府)だ。「病気を何とかしてという市民の祈りはいつの時代も変わらない。しかし、新型コロナ以降、寺での法要はしませんと寺側が言い出している。われわれは果たして弱者に寄り添えているのか。それができなければ寺は消滅していく」と訴える。

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