【越山若水】福井県置県80周年の節目に新聞連載した「ふくい新風土記」を福井新聞社は出版している。発刊に際して当時の北栄造知事はこう述べる▼「本県は京都、大阪など表日本の都会に比較的近い所にありながら今までは後進的な存在でした。ことし本県はれい明期の県政を迎えた」。北知事の力説するれい明の象徴こそが北陸トンネルだった。1962年に正式供用を開始し、その総延長は当時では日本一を誇るものだ▼風土記は“後進県”に甘んじる要因に嶺北と嶺南を分断する山々の険しさ、深雪を挙げ、京滋との交流を阻んできたとする。その上で山越えに難儀した人々、鉄道の歴史などを紹介する。明治の文豪、田山花袋もその一人だ。木ノ芽峠を目前にし人力車を断念させられた。風土記は田山の一文を掲載している。「北国街道をその翠微(すいび)の裡(り)に有する木ノ芽峠一帯の山峰の高さよ。また険しさよ」▼待望の北陸線敦賀―今庄の開通は1896年のことだった。今庄駅では、上り列車は山越えのため前後に機関車が付き2台で引っ張る。地盤の弱さによる崖崩れや雪害などに悩まされる様子が描かれる▼さて北陸新幹線の新北陸トンネルが近く貫通する。コロナ禍でうつむき加減な日々にあって朗報だし、2023年の敦賀駅開業にようやく実感が伴ってきた。先進県と胸を張れるような新時代の扉が開くことを信じたい。

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