【論説】地域の困りごとや不正の告発まで読者が身近に感じている「知りたい」ことに新聞記者が取材で応える「オンデマンド調査報道(ジャーナリズム・オン・デマンド=JOD)」が全国の地方紙で広まっている。読者と会員制交流サイト(SNS)でつながり、地域独自のニュースを深掘りする動きは新聞報道の在り方に一石を投じている。

 JODは西日本新聞社(福岡市)が2018年に始めた「あなたの特命取材班(あな特)」からスタートした。それまでの新聞報道と異なるのは、SNSを活用した読者との双方向性だ。新聞社と読者がSNSでつながり、取材してほしいことを直接聞き取って取材に動く。「(髪形の一種)ツーブロックを禁止した校則への疑問」「インフルエンザの治療証明は必要か」など読者の疑問が次々記事になった。

 反響は大きく同社とSNSでつながる読者は1万人を超えた。同様の取り組みは20社を超える地方紙に広がり、福井新聞社も4月から「ふくい特報班」を立ち上げ約2700人の読者とつながった。

 JODが始まった背景には新聞メディアの強い危機感がある。高齢化する主要な読者層と、若者の新聞離れだ。ニュースがインターネットを通し無料で手に入る情報化社会の今、本当に読者が求めている情報を記事にできているのか。そんな疑問が出発点だったという。

 これまでの新聞報道は記者自身が疑問に感じたり、知り得た情報をもとに取材し、記事にする。読者は与えられた情報を読む立場で、情報の流れる方向は一方向だ。

 これに対しJODは、読者とつながる伴走型の調査報道ともいわれる。地域での困りごとや暮らしで抱える疑問の中には、記者個人のネットワークでは気付くことができない意外な話題や社会的課題が潜んでいることも多い。住民目線の身近な話題だからこそ行政など社会を動かす力にもなる。何が問題で、どこに解決のヒントがあるのか、読者とともに探っていく。時にはつながった読者に話題を問い掛け、どのような思いを持っているのかまとめ上げ報じる。

 SNSという若者と親和性が高いツールを通したやりとりができるのも、若い世代との距離感を縮めた。「こんな話題でも新聞社が動くのか」という驚きはメディア像を変えつつある。

 JODで扱う話題は、県域を越えた共通の課題であることも多い。複数の地方紙が連携し、共通のテーマを取材する動きも新たに出てきた。「知りたい」という欲求にどう応えるのか。われわれ新聞人自らが試されている。

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