【論説】坂井市の日本一短い手紙一筆啓上賞のテーマが「笑顔」に決まった。新型コロナウイルス感染症で長く自粛生活が続いただけに、日常に戻っていく喜びや人とのつながりを手紙にしたためる機会にしたい。

 一筆啓上賞は、徳川家康の家臣で丸岡城ゆかりの武将・本多作左衛門重次が、陣中から妻にあてた書簡「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」を基に、旧丸岡町が1993年に創設した。「お仙」は後の丸岡城主・本多成重(幼名・仙千代)のことである。

 全国で先例のなかった手紙公募は、オンリーワンの町おこしを目指しスタート。当時としては異例の郵政省後援を取り付けるなど、当初から多くの関心を集めた。

 全国からの反響は大きく、第1回の「母」への手紙から毎回テーマを変え28回。応募総数は143万4590通を数える。中でも第9回の「いのち」は最多となる約13万通が集まった。応募はほとんどが手書きの作品で、手紙の大切さを広く再認識させた点でも評価されている。

 今回は新型コロナ禍で一筆啓上賞を取り巻く環境は大きく変わった。テーマ発表は例年より遅らせることになったが、この期間に家族や仲間とのつながりの大切さを実感した人も多くいたのではないだろうか。

 テーマ「笑顔」について、丸岡文化財団の田中典夫理事長は「笑顔は自分一人ではできない。必ずだれかの感情をもらって形づくられる。この輪を広げていけば、すばらしいコミュニケーションの輪ができる」とする。

 テーマは、今夏開催予定だった東京五輪・パラリンピックを念頭に1月には決まっていたという。「選手の笑顔は国民を元気づけるし、国民の笑顔で選手にも力を与える」との選定理由だ。笑顔が持つ力はとても大きい。新型コロナの収束を願う今、十分当てはまるテーマである。

 今年は坂井市が誕生し15年目。坂本憲男市長は「笑顔は人の心を豊かにする。新型コロナが世界的な問題となっているが、笑顔で元気になるような作品を期待している」と呼びかける。

 全国の反響を得続けてきている手紙文化。手紙こそ心を伝える最も強い手段ではないか。「新しい生活様式」を模索する日が続く中、作品にそれぞれの思いを託してほしい。

関連記事