【越山若水】「久方のアメリカ人(びと)のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも」。大の野球好きだった俳人、歌人の正岡子規が詠んだ一首である。天(あめ)や雨にかかる枕詞(まくらことば)「久方の」をアメにかけているのが面白い▼新型コロナ禍の影響でプロ野球は約3カ月遅れで開幕し、1週間になる。感染防止のため無観客試合で始まったが、ファンにとっては待ちに待ったシーズンだ。客席に応援ボードが並んだり、応援の様子がオンラインでつながった球場の大型ビジョンに映し出されたり、熱い思いが伝わってくる▼例年より試合数が減り過密日程になるなど選手は大変だが、中身の濃い試合や全力プレーで、コロナ禍に沈んでいた国民を勇気づけてもらいたい。一方、労使対立があった米大リーグは、来月下旬に開幕することになった。野球ファンには朗報だ▼ベースボールの歴史をひもとくと、米国の南北戦争(1861~65年)との意外な関連が浮かび上がる。戦いの合間のレクリエーションとして試合が行われ、終戦後帰郷した兵士がチームをつくり、各地に広まったという▼日本には従軍兵が、お雇い外国人教師として来日し伝えた。子規は東京大予備門(現東大教養部)入学後プレーに興じた。「春風やまりを投げたき草の原」の句が残る。昔も今も変わらないのは、広いグラウンドで思う存分野球を楽しめる日常のありがたさである。

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