【越山若水】韓国青瓦台(大統領官邸)の昼食会でこんな会話が交わされた。「韓国と北朝鮮の言葉は、抑揚や単語にある程度違いがあっても聞き取れるが、イカとタコは南北で正反対ですね」▼すると一人の女性が満面の笑みで応じた。「まずそこから統一しなければなりません」。その人こそ、北朝鮮の金与正(キムヨジョン)党第1副部長。2018年2月に平昌(ピョンチャン)冬季五輪の特使として訪韓し、南北融和路線を世界に向けアピール。雪解けムードを演出した張本人である▼高い評価を受けた「ほほ笑み外交」から一転、与正氏は「毒舌プリンセス」と呼ばれる羽目になった。韓国の脱北者団体のビラ散布に激高し、南北共同連絡事務所を爆破する強硬策に出た。開城(ケソン)工業団地への部隊展開など4項目の「軍事行動計画」まで明らかにした▼1950年の朝鮮戦争勃発から、きょう70年の節目の日を迎える。長すぎる南北分断の歴史、今なお終わらぬ休戦状況は世界に類例をみない。せっかくともり始めた友好の炎が消えそうで、むしろ一触即発の火種がくすぶるリスクの高い現状は、残念としか言えない▼開戦70周年に配慮してか、北朝鮮は韓国に対する軍事行動計画をいったん保留した。言葉の壁は多少あるとしても、融和の扉は閉ざされないよう願うばかりだ。余談ながら、北朝鮮の食堂で「タコ炒め」を注文すると、韓国でいうイカが出るらしい。

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