人工巣塔から巣立ち、水田の上を悠々と飛ぶコウノトリの「やまちゃん」=6月21日午前11時50分ごろ、福井県越前市安養寺町

 福井県越前市安養寺町の人工巣塔で生まれた国の特別天然記念物コウノトリのひな4羽のうち、雌1羽と雄1羽が6月21日、巣立った。親鳥の1羽は、福井県が4年前に同市で放鳥した個体。県内で野外繁殖のひなが巣立つのは、58年ぶりとなった昨年の坂井市の4羽に続き2年連続となった。

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 親鳥は2016年に越前市坂口地区で放鳥された雄「たからくん」と、兵庫県豊岡市生まれの雌「みやびちゃん」のペア。昨年も同じ巣塔で3羽をかえし、県内の野外で55年ぶりのひな誕生となったが、いずれも数日で死なせてしまった。今年は2月下旬から巣作りする姿が見られ、4月中旬にひなが確認された。巣塔は12年秋に設置され、高さ13メートル、巣台が直径1・6メートル。

 最初に巣立ったのは、雌の「やまちゃん」(J0300)で周囲を見渡して羽ばたきを繰り返し、午前7時25分ごろ、斜め下に飛行して巣塔から50~60メートル北側の田んぼへ降り立った。その後、2キロほど離れた田んぼでは、たからくん、みやびちゃんペアのそばで餌をついばむ姿が見られた。

 午後には雄の「さーくん」(J0301)も巣立った。残りの2羽も羽ばたきの練習を繰り返しており、近く巣立つとみられる。

 絶滅前、国内で最後までコウノトリが生息していたエリアの一つである越前市では、地元農家が09年から無農薬無化学肥料のコメを作るなど地道に活動を続け、持続可能な里山を目指してきた。県は11年から、コウノトリを豊かな自然環境のシンボルに掲げた飼育繁殖事業をスタート。越前市も同年に「コウノトリが舞う里づくり構想」を策定し、環境づくりを進めてきた。

 奈良俊幸市長は「10年余りにわたるコウノトリが舞う里づくりの成果として、ついに巣立ちが実現したことを大変うれしく思う。今後もコウノトリの自然繁殖と定着に向け、引き続き地元住民や関係団体と連携していく」とコメント。県自然環境課も「地元はじめ関係者の努力が実り、大変うれしく思う」と喜んだ。

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