新築される旅館の外観イメージ

 インバウンド(訪日外国人客)の獲得に向け、福井県越前市京町で休業中の旅館を富裕層の受け入れにも対応できる宿泊施設に再生するプロジェクトが進んでいる。市と市観光協会が進める訪日客誘致事業の一環で、プロジェクトを進める事業者は「日本旅館を通じて市内の日本文化すべてを感じてもらいたい」と、体験メニューの充実も図る。年内オープンの予定。

 事業者は、京町で老舗料亭を営む萬谷(萬谷宏治社長)。料亭に併設する旅館の一部を取り壊し、1棟貸しする木造2階建て(延べ床面積91平方メートル)を新築する。さらに2階建て既存部(同471平方メートル)を改修し、2部屋を設ける。

 建物に面する石畳の寺町通りに調和する和風のデザインで統一。一方で、訪日客がくつろげるように各部屋にベッドを配置する。新築部には、デッキテラスや暖炉付きのリビングルームなども設ける。

 料亭ではこれまでも「天皇の料理番」を務めた同市出身の天皇の料理番、秋山徳蔵にちなんだメニューや越前和紙を用いた懐石料理を提供してきた。萬谷社長は「丹南に点在する伝統工芸すべてを“食”で包み、全国、全世界に発信していきたい」と意気込む。

 和装や書道、茶道の体験、プロカメラマンによる近くの神社仏閣での記念撮影などのアクティビティも用意。越前和紙や越前打刃物、越前箪笥(たんす)などの工芸産地で楽しめる体験メニューとの連携も進めていく。基本料金は1泊1人2万5千円を想定している。

 新型コロナウイルスの影響で訪日客は当面見込めないが、萬谷社長は「丹南の文化や歴史を楽しんでくれる国内需要を掘り起こす機会にしたい。年配客にも安全安心に過ごしてもらう施設整備、サービスに努める」と前向きに捉えている。

 プロジェクトは、市が国の地方創生推進交付金を財源に2020年度まで展開する訪日客誘致事業の一つ。事業の業務委託を受ける市観光協会が、公募で選んだ宿泊施設の「部屋在庫」を開業前に一定額買い取り、事業者の初期投資の負担軽減につなげている。

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